Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年9月7日 No.3329  ワシントン・リポート<8> -キャピトル・ヒル訪問で見えてきたこと

米国議会(キャピトル・ヒル)は、その名のとおり首都ワシントンDCを見下ろす丘の上にある。貿易摩擦激しき時代には、キャピトル・ヒルの一角で日本製のラジオカセットレコーダーが叩き壊される様子がテレビで放映されるなどして、議会強硬派の動きが懸念されたものだ。最近は、トランプ大統領の言動に比して議会の冷静さが目立ち、隔世の感がある。

とはいえ、特に小選挙区制で選出された下院議員が、選挙区事情、選挙民の意識に応じて時に派手な行動に出ざるを得ない状況は変わらない。それゆえ日ごろから、日米関係、日本経済、日本企業と選挙区との関係などについて、議員およびスタッフの理解を得るよう努め、良好なネットワークを構築していく必要がある。

経団連では、米国事務所を主軸に、対米連携強化タスクフォースの活動を通じて、キャピトル・ヒルへの働きかけを強化している。すでに、ガードナー上院議員、カストロ下院議員、ライカート下院議員の事務所など14の議員事務所などを訪問し、延べ22名の議員およびスタッフと面会してきたが、そうした活動であらためて見えてきたことがある。

第1に、キャピトル・ヒルの日本ならびに日本企業への関心は概ね非常に高かったことが挙げられる。例えば、上院財務委員会のスタッフであるイアン・ニコルソン氏は、国際交流センターの議員スタッフ招聘事業で訪日し、経団連での会合に参加したこともあって、日本への強い親近感を示した。当日は、経団連会員企業の米国駐在スタッフの同行を得て、在米事業の実態と関心、懸念などを説明したのに対し、大いに関心が示された。他方、いまだ日本になじみのない議員、スタッフも多く、そのような層への働きかけも重要と考える。

第2に、面会するからには、こちらからのメッセージあるいは懸念、関心事項について具体的な説明が強く求められることである。各議員事務所では、議員はもちろんスタッフも、選挙民からの陳情対応、所属委員会活動のための情報収集、打ち合わせなどで分単位のスケジュールをこなしており、いわゆる「ごあいさつ訪問」に付き合う余裕はない。

これらの点は、キャピトル・ヒルが多様な民意を吸い上げ、法案作成を含む政策決定に活かす、血管のような役割を果たしていることの証左といえる。米国ではロビイングが憲法の保障する請願権の行使と位置づけられているように、個人や企業のニーズを議員、スタッフに請願する権利があり、半面、それは民主主義を機能させるための義務とも思える。

当然、市民権のない外国人、日本企業関係者の請願には、さまざまな制約があるが、米国経済の一翼を担う重要なアクターということもあって、その声は大いに尊重されている。米国事務所としても、キャピトル・ヒル訪問を日常化し、議員およびスタッフとの相互理解、ネットワーク強化に努めたい。

(米国事務所長 山越厚志)