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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年9月21日 No.3331 マイナンバー制度を活用した電子政府の構築 -東工大の大山教授から聞く/行政改革推進委員会企画部会

説明する大山教授

経団連は9月6日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会企画部会(大久保秀之部会長)を開催し、東京工業大学の大山永昭教授から「マイナンバー制度を活用した行政、医療分野の情報化」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 直面する社会的課題への対処

マイナンバー制度は、少子高齢化が進行するなか、ICTを最大限に活用して、関連業務や歳入と歳出のバランス等の改善を実現するために導入された。これからは、歳出の抑制にも積極的に活用すべきである。

■ マイナンバーカードの普及策

個人番号が記載されたマイナンバーカードにはJPKI(注1)が格納されており、現状における最高レベルの電子身分証明書である。制度的には、顔写真付き身分証明書と同レベルで本人確認を行うことができるが、カードの申請数は減少傾向にあり、普及に向けて民間での活用促進が求められる。

(1)デジタルチケットへの応用

マイナンバーカードを活用して、コンサート等のチケット購入から会場への入場までの一連のプロセスを電子的に行うための実証試験を総務省が実施している。これが実現すれば、チケットの高額な不正転売の防止や空席の有効利用、入場時の本人確認の簡素化が図られる。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会で実施できるよう、他国のPKIを装備する電子身分証明書との互換性を確認する必要がある。

(2)医療分野への応用

国の社会保障支出が増大しており、無駄と不正の排除が急務となっている。こうしたなか、厚生労働省の「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」は、16年10月に取りまとめた提言において「患者・国民を中心に保健医療情報をどこでも活用できるオープンな情報基盤PeOPLe」の整備を提唱した。PeOPLeの整備により、個人の性別や年齢などの基本情報、既往歴や服薬歴等を個々人にひも付いたデータとして統合し、専門職や本人が参照・利用できるようにすることで、個人の疾病・健康状態に合わせた最適な保健医療が生涯にわたり受けられるようになるとされている。

ただし、PeOPLeを実現するためには、全国レベルの医療用ネットワークを構築し、保健医療関係者がHPKI(注2)を利用することが必要になる。そこで、全国をカバーする医療用ネットワークの構築とHPKIカードの申請簡略化等の実証試験を、三師会、厚労省、総務省が協力して実施している。

■ 利用者の利便性向上

公的個人認証サービスの利便性向上を求める声が大きいため、スマートフォンでの利活用に関する実証実験が総務省により実施された。その結果、技術的には可能であることが確認されたため、実現に向け、関連法の改正に向けた準備が進められていると聞いている。

(注1)JPKI(Japanese Public Key Infrastructure、公的個人認証サービス)=オンラインで申請や届け出といった行政手続きなどや、インターネットサイトにログインを行う際に、他人による「なりすまし」やデータの改ざんを防ぐために用いられる本人確認の手段

(注2)HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure、保健医療福祉分野PKI)=医師・薬剤師・看護師など保健医療福祉分野の26種類の国家資格と、院長・管理薬剤師など5種類の管理者資格を電子的に認証する手段

【産業政策本部】

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