Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月19日 No.3335  OECD/BIACと国際課税に関する会議開催 -税の安定性確保に向けた取り組み加速へ

あいさつする宮永副会長

説明するサンタマン局長

経団連の税制委員会(宮永俊一委員長、林田英治委員長)および21世紀政策研究所(三浦惺所長)は10月3日、東京・大手町の経団連会館でOECDおよびOECDに対する民間経済界の諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC)と国際課税に関する会議を開催した。同会議はOECD/G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを契機として2015年に始まったもので、今回で第3回となる。

経団連の宮永副会長・税制委員長、林田税制委員長、21世紀政策研究所の青山慶二研究主幹(早稲田大学大学院教授)、パスカル・サンタマンOECD租税政策・税務行政センター局長、吉田正紀財務省主税局国際租税総括官、BIAC税制・財政委員会のウィリアム・モリス委員長、キャロル・ドーラン・クライン副委員長、岡田至康副委員長、ならびに会員企業から約200名が参加した。

15年10月にBEPS最終報告書が公表されてから2年が経過した。この間、各国は国別報告事項など、最終報告書で勧告された内容について国内法制化を進めている。また、今年6月には、多国間協定(BEPS防止措置実施条約)が署名された。租税条約の濫用防止、PE(恒久的施設)の範囲拡大などの規定が、今後、既存の二国間条約において順次、反映されることになる。

こうした情勢を踏まえ、宮永副会長は開会あいさつのなかで、「勧告の実施に際し、重要なことは、各国に対して一貫性のある行動を促すとともに、紛争解決を確実なものとし、納税者にとっての税の安定性を確保することである」と述べ、わが国経済界として関係方面に対し、税の安定性の確保を継続して働きかけていく必要があると指摘した。

これに対しサンタマン局長は、「今年の重要課題は税の安定性である。この問題に焦点が当たっているのは日本企業の声があったからだ」と応じ、税務紛争の予防・解決に積極的に取り組んでいく姿勢を示した。具体的には、国別報告事項を基礎とする多国間のリスク評価メカニズムであるICAP(国際的コンプライアンス保証プログラム)のパイロット・プロジェクトを18年から始動させること、また、相互協議の改善等に関する各国の約束のピアレビューを予定どおり実施することについて説明があった。

このほか、BEPSプロジェクトにおける積み残しの課題であり、現在もOECDで議論が続いている項目である(1)評価困難な無形資産に対する課税手法(所得相応性基準)(2)取引単位利益分割法(3)PE帰属利得――についても取り上げ、日本企業の問題意識をOECDの政策当局者に伝えた。9月27日に公表された米国の税制改革フレームワークについては、連邦法人税率の20%への引き下げに伴う代替財源のオプション・経過措置や改革の見通しについて意見交換を行った。なお、欧州を中心に議論が活発化している電子経済への課税問題については、ユニラテラルな措置は避けるべきであり、OECDにおいてグローバルな共通ルールを検討することが重要との指摘があった。

経団連税制委員会・21世紀政策研究所はOECD・BIACとも協議のうえ、18年度を目処に第4回会合を開催する予定である。

【経済基盤本部】