Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月19日 No.3335  21世紀政策研究所がセミナー「トランプ政権のこれまでと今後、そして日本への影響」開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は9月26日、セミナー「トランプ政権のこれまでと今後、そして日本への影響」を開催した。
同研究所米国プロジェクトの久保文明研究主幹(東京大学法学部教授)、前嶋和弘研究副主幹(上智大学総合グローバル学部教授)、西山隆行研究委員(成蹊大学法学部教授)が、トランプ政権と政権を取り巻く諸情勢について解説を行った。

■ トランプ政権のこれまで

久保研究主幹は、高官の相次ぐ交代によるホワイトハウスの混乱と不安定がトランプ政権の政策遂行を妨げてきたが、新首席補佐官のケリー氏の統制により大統領を支えるホワイトハウスが安定するかどうかに注目しているとした。トランプ外交については、当初は「アメリカ第一主義」による孤立主義が懸念されたが、その後はNATO、日本、韓国との同盟を重視する伝統的な外交へ回帰したと解説した。また、北朝鮮問題については、米国が武力行使した場合の韓国、日本への被害という大きなリスクを考えると、旧ソ連に対して行ったような長期の封じ込め策をとることになるのではないかとの見方を示した。

■ 税制改革、ロシアゲート等をめぐる米国政治情勢

前嶋研究副主幹は、税制改革は議会共和党リーダーとトランプ政権の関係修復がカギではあるが、債務上限問題で妥協を図った民主党リーダーとの間で税制改革を移民問題と〝取引する〟という話もあるなど、この秋の米国政治の最大の争点になるとした。ロシアゲートについては、大統領の弾劾には下院の過半数の賛成による訴追、上院の弾劾裁判での3分の2以上の賛成が必要であり、現在、共和党が多数を占める下院・上院では弾劾の可能性は少ないと説明。そのうえで、来年の中間選挙に向けて、民主党がロシアゲート疑惑解明に力を入れていくのは確かであり、今後の動きが注目されるとした。

■ 移民をめぐる動向とトランプ政権の通商政策

西山研究委員は、いわゆる“ラストベルト”の労働者階級の白人が移民に対して感じている脅威は、(1)白人労働者階級の社会的地位の低下・失業は産業構造の変化と機械化による(2)移民は社会福祉制度に対し大きな負荷をかけていないし、犯罪率も相対的に低い――といったことを考えると実体のない抽象的なものにすぎないと解説。

それにもかかわらず、トランプ政権はその脅威に基づいて、移民に対する取り締まりを強化する政策を実施しようとしていると指摘。また、トランプ政権の通商政策に関しては、NAFTAの原産地規則の厳格化について、国内自動車業界等が反対していることから実現は難しいのではないかとの見方を示した。

<パネルディスカッション>

パネルディスカッションでは、米国における自由貿易主義と保護貿易主義に対する考え方の背景や、世論の支持がその時々で自由貿易主義と保護貿易主義の間で揺れ動いていること等について意見を交換した。西山氏は、米国のように貿易の自由度が高いと、さらに自由化を進めても目に見えるかたちでのメリットは出にくく、むしろ自由貿易の推進・グローバル化により経済格差が大きくなってしまうことなどから、自由貿易のメリットよりデメリットのほうがみえやすくなってしまっていると分析。その結果として、今は共和党、民主党の二大政党ともに自由貿易に対して反対する立場が強くなっているのではないかと指摘した。

【21世紀政策研究所】