Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月26日 No.3336  ワシントン・リポート<15> -全米各地に根を張る日米協会の重要性

ワシントンDCにNAJAS(National Association of Japan-America Societies、全米日米協会連合会)という組織がある。1978年に設立され、ニューヨークのジャパン・ソサエティをはじめ全米各地の36の日米協会とカナダのジャパン・ソサエティがメンバーとなっている。

10月16日、米国事務所では、ワシントン日本商工会の研修会を共催し、NAJASのアイラ・シャピロ前会長(元USTR大使=日本・カナダ担当)、デビッド・シアー新会長(元国防総省アジア太平洋安全保障問題担当次官補)ならびにピーター・ケリー理事長から話を聞くとともに、日米間の「貿易・政治・安全保障」をめぐる諸課題について意見交換した。

シャピロ前会長は、日米関係の重要性は不変であり、トランプ政権においても安倍首相との緊密な協力関係が築かれていることを評価した。同時に、かつては大統領が自由貿易の旗手となり、議会のなかに保護主義的な動きがみられるという構図だったことを思い起こすと、最近の状況はやや特異で先が読みづらくなっていると指摘した。さらに、トランプ政権によるNAFTA再交渉の動向、中国への対応が注目されると述べた。

シアー新会長からは、中国の台頭、北朝鮮問題に米国の国内政治が相まって、アジア・太平洋地域に関する不確実性が増しているなかで、11月のトランプ大統領のアジア歴訪が注目されており、米国は日米同盟の重要性をかつてないほど痛感しているとの話があった。

ケリー理事長からは、NAJASが一貫して日系企業による米国経済・社会への貢献を認識し周知してきたとの話があり、活動の一例として、経済広報センターの協力を得て進めている「ビジネス・スピーカー・シリーズ」の紹介があった。これは、NAJASが各地の日米協会と連携して、日本企業関係者ならびに日本専門家による講演会を開催するもので、2012年12月のミシガン州デトロイトから今年9月のノースカロライナ州シャーロットまで、29回を数える。筆者は、かつて、このプログラムの前身ともいえるスピーカーズ・キャラバンで米国各地を訪問しており、このプログラムにもたびたび参加したことが、米国事務所の活動などを紹介しつつ、地方の息吹を感じる貴重な機会となっている。

トランプ大統領の誕生は、米国におけるワシントンと各州での意識の違いを浮かび上がらせる結果となった。トランプ現象の発端と源がワシントンよりもラストベルトに象徴される各州の現場にあったとすれば、現状を変革する動きも地方から出てくる可能性がある。米国各地に根を張りグラスルーツで地道な活動を続ける日米協会の役割が、注目され重要性を増していると感じた。

(米国事務所長 山越厚志)