Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年11月2日 No.3337  経団連自然保護協議会がインドネシアへ生物多様性ミッションを派遣 -持続可能な自然資源の利用に向けた人材育成への取り組みを視察

本清臨時代理大使(右)と二宮会長

経団連自然保護協議会(二宮雅也会長)は毎年、経団連自然保護基金を通じて国内外のNGO等が行う自然保護・生物多様性保全プロジェクトに資金支援を行っている。同協議会では、これらの支援プロジェクトを毎年数カ所選定し、視察を行うとともに、政府やNGO等と意見交換等を行っている。

2017年度は、10月3日から7日にかけて、二宮会長を団長とするミッション(総勢21名)をインドネシアに派遣し、スマトラ島ブキ・バリサン・セラタン国立公園およびジャワ島グヌン・ハリムン・サラック国立公園内のプロジェクトサイトを訪問、NGOや現地住民等と懇談した。また、在インドネシア日本大使館の本清耕造臨時代理大使と懇談するとともに、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(日本商工会議所ジャカルタ事務所)を訪問し、日系現地法人の生物多様性保全事業について意見交換を行った。

今回のミッションでは、生物多様性保全活動に際しての、(1)本社・現地法人・経済界との連携・役割分担のあり方(2)人材育成等に関する支援や評価のあり方――を掲げ、これらの課題について考えるきっかけとなった。

■ 本清臨時代理大使との懇談

本清臨時代理大使は、「インドネシアでは、サステナブルに自然保護をしていくことが課題となっている。日本政府としても、公的機関のみならず企業やNGOを含めた協力連携をどう実現するのかを先駆的な取り組みとして模索している」と紹介。そのうえで、経団連自然保護協議会が今回の視察のテーマとしている人材育成については、「21世紀のインドネシアを担う人材の育成に、日本がどのように協力できるのか、同協議会の活動からも学びたい」と述べた。

■ JJCとの懇談

JJC(ジャカルタ・ジャパン・クラブ)では、イオン・インドネシアの菓子豊文社長、アメルタインダ大塚の中田梢マーケティングリサーチマネージャー、トヨタ自動車インドネシアの石田康介エグゼクティブコーディネーター、富澤陽一JJC事務局長と面会し、各社が取り組む植林や希少植物の保全、海岸清掃などの自然保護・生物多様性保全に関する活動について説明を聞くとともに意見交換を行った。

ブキ・バリサン・セラタン国立公園でのウエルカムセレモニー。
左からプリムハン村長、鎌田副団長(王子ホールディングス常務)、
二宮会長、国立公園副園長、WWF現地プロジェクトリーダー

■ 支援プロジェクト活動サイト訪問

(1) WWF活動サイト(ブキ・バリサン・セラタン国立公園)訪問

ブキ・バリサン・セラタン国立公園内での状況確認

かつて密猟や違法な農園開拓が行われ、絶滅危惧動物が生息している国立公園内で、WWF(世界自然保護基金)は地域住民等と協力して、餌を求める野生ゾウの村落や農園への侵入を防ぐため、住民パトロールを行うとともに、国立公園や保護林内の土地を農園として違法に利用していた住民に対する代替産業支援等を実施。その結果、絶滅危惧動物の生息環境や個体数の維持・回復が図られ、また、自然保護の重要性について地域住民の意識向上が図られている。

(2) JEEF活動サイト(グヌン・ハリムン・サラック国立公園)訪問

同国立公園は、首都ジャカルタから100キロメートル圏内に位置しながら豊かな生物多様性を有し、ヒョウ、クマタカ、テナガザル等の絶滅危惧種が生息しており、ジャカルタの重要な水源地でもある。同国立公園内において、地域住民による違法伐採や違法耕作への対策を講じるにあたって、NGOが政府・国立公園管理事務所等と地域住民との利害調整の懸け橋の役割を果たしている。JEEF(日本環境教育フォーラム)は、地域住民等がジャカルタ市民を対象に行うエコツーリズムへの協力等、都市と農村における人材育成事業を手がけている。

同事業は、経団連自然保護協議会25周年記念特別基金助成事業の展開地の1つである。