Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年11月16日 No.3339  ワシントン・リポート<18> -トランプ大統領のアジア諸国歴訪の背景となる意識調査

トランプ大統領のアジア歴訪は、今後の外交政策を見通すものとして注目されている。その背景には、選挙期間中からのトランプ大統領による言動の不確実性があるが、実は米国民の意識や諸外国の米国観の不確実性がトランプ大統領の言動のベースになっているともいえる。

ピュー・リサーチ・センターは11月9日、「米国は、かつてに比べ諸外国の尊敬を受けていない」という書き出しの調査レポートを発表している。米国民のこうした声は、オバマ政権でもブッシュ政権でも多数派だったが、今日では68%に上っているという。ただし、共和党員および共和党寄り独立派の間では、この数字は42%と10年ぶりの低さで、それを深刻な問題とする声は28%にすぎない。29%はオバマ政権やブッシュ政権2期目の時よりも尊敬を受けているとさえ答えている。他方、民主党員および民主党寄りでは、オバマ政権時代の昨年でも58%が「かつてより尊敬を受けていない」と答えていたが、今日では87%がそう答えており、それを深刻な問題とする声は70%に上っている。米国が世界のリーダーとして尊敬されているとの認識が大いに揺らいでいるといわざるを得ない。

11月3日、同センターは、諸外国、とりわけフィリピン、ベトナム、韓国、日本の米国観の調査結果をレポートしている。これによれば、トランプ大統領が国際問題に適切に対処していると信頼する声は、調査対象37カ国内で22%にとどまっている。フィリピンで69%、ベトナムで58%と高いが、日本で24%、韓国で17%という数字になっている。特に、韓国ではオバマ大統領時代の2015年の数字から71%ポイントも低下したと指摘されている。

他方、中国の習近平国家主席への信頼は、フィリピンで53%、ベトナムで18%、日本で11%に対して、韓国では38%となっており、トランプ大統領への信頼よりも21%ポイント高い。欧州では、米国よりも中国を世界の主導的経済パワーとみる傾向が強まるなか、アジアでは、韓国で66%、日本で62%、ベトナムで51%、フィリピンでも49%が、米国の方を主導的経済パワーとみている。ちなみに、米国民も51%がそうみている。

中国が経済的な影響力を強めるなかで、米国のリーダーシップを評価し、それに期待する声は弱まっているが、アジアでは依然として評価が高く、期待感も強いとの構図になっている。トランプ政権の貿易協定や気候変動協定からの離脱を支持しない声が、日本で66%、ベトナムで61%、フィリピンで72%、韓国では80%となっているのもうなずける。

トランプ大統領がアメリカ・ファースト発言を執拗に繰り返す背景には、こうした構図がみえる。11月9日のレポートでは、今後の米国との関係について、全体で41%がトランプ政権でも変わらないと答え、32%が悪化すると答えている。日本では34%が不変、41%が悪化、17%が改善と答えている。米国のリーダーシップの揺らぎから日米関係の悪化を懸念するのではなく、日本がアメリカのリーダーシップを支えるかたちで日米関係を改善、強化していくことが肝要と思われる。

(米国事務所長 山越厚志)