Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年12月14日 No.3343  第14回日本ロシア経済合同会議をモスクワで開催

170名もの日露経済人が熱い議論を展開

朝田委員長のメッセージに熱心に聞き入る
ドヴォルコヴィッチ副首相(左から2人目)

経団連の日本ロシア経済委員会(朝田照男委員長)は11月28日、モスクワを訪問し、ロシア産業家企業家連盟(RSPP)のアレクサンドル・ショーヒン会長と朝田委員長を共同議長とする第14回日本ロシア経済合同会議を開催した。

昨年5月のソチにおける日露首脳会談で安倍晋三総理大臣がウラジーミル・プーチン大統領に提示した8項目の「協力プラン」(注1)が起爆剤となるかたちで、100を超えるプロジェクトが合意に至るなど、日露ビジネスをめぐる機運が高まっている。こうしたなか、5年ぶりの開催となった同会議では、アルカジー・ドヴォルコヴィッチ副首相を来賓に迎え、日本側から77名、ロシア側から93名が参加し、熱い議論が行われた。

なお、訪問に先立ち、11月15日に結団式が行われ、外務省の正木靖欧州局長と経済産業省の田中繁広通商政策局長から、ロシアの内政や外交、日露経済関係の現状等について説明があった。

合同会議の各セッションの概要は次のとおり。

■ ロシア経済近代化に向けた日露協力のあり方

第1セッションでは、ロシア経済の近代化に向けた日露協力のあり方について意見が交わされた。

ロシア側からは、資源・エネルギー依存構造からの脱却をねらった輸入代替政策の一環として、ロシア連邦産業政策法のもとでの特別投資契約や輸出支援、ロシアに投資する外国企業へのサポート体制等に関する説明があった。また、日露政府の「デジタル経済に関する協力に係る共同声明」(注2)も念頭に、ロシア経済のデジタル化に向けた取り組みやテクノパーク構想等が紹介された。

これに対し経団連側から、ロシア進出企業の現地生産における具体的な課題や対露投資が進まない根本要因(成功事例や日本語人材の不足等)を説明するとともに、Society 5.0 などデジタル経済への日本の貢献のポテンシャル等を強調した。

■ 優先分野における協力

続く第2セッションでは、優先分野における協力として、インフラ、ヘルスケア、農業、資源・エネルギー、輸送、都市インフラ、人的交流等、8項目の「協力プラン」を網羅する分野におけるビジネスの現状が紹介されるとともに、日露協業のポテンシャルや展望等で意見交換が行われた。

経団連側からは、日露の貿易投資関係を拡大・深化させていくうえで大きなボトルネックとなっている鉄道や空港、港湾、道路、上下水道、発電所等インフラの整備について官民パートナーシップ(PPP)やコンセッション方式等、民間開放の仕組みの導入、さらに、人的交流拡大の観点から査証要件の緩和等を具体的に要望した。

■ 極東を中心とした地域間協力

第3セッションでは、極東等の地域に投資家を誘致するための地域間協力の推進に向けた方策等について議論が行われた。

経団連側が、主に極東でビジネスを展開するうえでの課題や物流網の発展、北極海航路の開拓等、将来の展望について紹介した一方、ロシア側は、極東はじめ各地域で推進されているビジネス環境の現状や、投資を阻害している要因を除去するための具体策を説明した。

■ 主な成果と今後の取り組み

共同声明に署名、握手する両共同議長
(右からショーヒン会長、朝田委員長)

世界銀行「Doing Business 2018」によれば、ロシアのビジネス環境は、世界貿易機関(WTO)加盟時の2012年の120位から直近の35位へと着実に改善されている。しかしながら、日本の対露投資は他国に比べて伸び悩んでいる。

今次会合では、日露win-winビジネスの拡大と深化という観点から、ショーヒン会長はじめRSPPやロシア連邦・地方政府幹部等との間で、これまでになく踏み込んだ議論が展開された。まず、投資が進まない現状および課題に関する認識を双方が共有したうえで、日本企業が直面する障害を一つ一つ取り除くことによって、「日露間の貿易・投資の増加とビジネス環境のさらなる改善」という、中長期的な好循環をつくり出していく方向性が確認された。

一行は同会議を挟んで、ドヴォルコヴィッチ副首相、マクシム・オレシュキン経済発展大臣(兼対日貿易経済協力担当大統領特別代表)、ヴァシーリー・オシマコフ産業・商業省次官など、日露経済関係の鍵を握るロシア連邦政府要人と個別に面会し、本質的かつ双方向の政策対話を行った。

現状や課題に関する認識を共有したうえで、緊密なコミュニケーションを通じて、日露双方が相互理解の増進に努力する方向性が確認された。とりわけオレシュキン大臣は、ロシアのビジネス環境を日本企業に説明するとともに、経団連会員企業との対話を行うべく、「2018年春訪日」の意思を明言した。

18年は「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」にあたる。次回の合同会議については、今回署名、公表された共同声明も踏まえ、18年に東京で開催すべく、RSPPと調整していく。

(注1)8項目の協力プラン=(1)健康寿命の伸長 (2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり (3)中小企業交流・協力の抜本的拡大 (4)エネルギー (5)ロシアの産業多様化・生産性向上 (6)極東の産業振興・輸出基地化 (7)先端技術協力 (8)人的交流の抜本的拡大

(注2)デジタル経済に関する協力に係る共同声明=17年9月、ウラジオストクで、世耕弘成経済産業大臣とオレシュキン経済発展大臣の間で、広範な分野でのデジタル経済の実現に向けた取り組みを進めることに合意

【国際経済本部】