Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月1日 No.3344  「IoS(Internet of Services)社会実現に向けての課題」 -東洋大学の坂村情報連携学部長が講演/情報通信委員会

経団連は11月27日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会(中西宏明委員長、遠藤信博委員長、金子眞吾委員長)を開催し、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長で東洋大学情報連携学部(INIAD)学部長の坂村健教授から、「IoS(Internet of Services)社会実現に向けての課題」と題した講演を聞き、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 中国で起こっていること

中国が大きく変わりつつある。大手IT企業が提供するモバイルペイメントサービスを5億人以上が使うようになった。2017年10月には故宮博物院の現金チケット売り場が撤去された。日本では、電子化が中途半端なためにかえってコストが増える例もあり、国全体のコストをどう下げるかの議論が必要である。

シェアリングエコノミーも発展している。例えば、自転車のシェアリングサービスMobikeは、わずか1年間で500万台の専用自転車を投入した。乗り捨てが社会問題化したが、IoTで対応している。また、データの解析で道路状況もわかる。

■ IoTからIoSへ

IoSはモノ、ヒト、サービスがネットワーク、API(注)でつながる世界である。そうした世界をSociety 5.0というのであれば、われわれが目指すものと一緒である。

IoSによって新しい産業を創出するため、中小企業も含めたオープンAPIの産業連携プラットフォームをつくるべきである。また、契約を含むすべてのビジネスプロトコルの電子標準化も必須である。印鑑や印紙もやめるべきだ。

■ オープンデータの推進

官民データ活用推進基本法の制定は重要な一歩である。オープンデータが間接的にIoTデータを補強する。オープン化の目的を明確にすべきだと主張する人がいるが、わかっていて行うのはイノベーションではない。今までのやり方ではできなかったことができるようになるためのインフラ整備が必要である。

例えば、東京都に乗り入れている交通機関のデータのオープンデータ化、地方自治体のオープンデータ化のサポート、おもてなしプラットフォームの構築等を進めている。

セキュリティ対策のためのガバナンス管理も求められる。IoT機器とクラウドをいかに頑強かつ柔軟につなげるかが課題である。

■ +AIの時代

今後、IoS社会にAIをどう適用していくかに関心がある。Googleがアルファ碁に用いたAIを空調管理に適用して、40%の省エネを実現している例もある。また国内でも、キュウリ農家がGoogleのソフトウエアを使って自動でキュウリを等級分けする機械をつくった。技術はもとより、課題がある現場でAIを使いこなせるようになることも重要だ。

そうした問題意識のもと、INIADでは、新しいIoS時代の教育として、文芸理融合でエンジニアリング、デザイン、ビジネス、シビルシステムに関する教育を行う。講師陣の性別、国籍、年齢等の多様性も担保している。17年4月、赤羽台キャンパスに最先端のIoTビル「INIAD HUB-1」が完成しており、優れた人材を育てていきたい。

(注)API=Application Programming Interface、あるシステムで管理するデータや機能を、外部のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約

【産業技術本部】