Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月11日 No.3345  「知的財産戦略ビジョン」の今後 -住田知的財産戦略推進事務局長から聞く/知的財産委員会

経団連は12月13日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会(日覺昭廣委員長、近藤史朗委員長)を開催し、内閣府の住田孝之知的財産戦略推進事務局長から、2018年5~6月を目途に策定する「知的財産戦略ビジョン」の検討の方向性等について説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。

知的財産戦略本部では、政府一体での知財戦略を推進するために、毎年「知的財産推進計画」を策定している。しかし、われわれは現在、イノベーションの変質、技術の進歩、人々の価値観の変化、さまざまな社会課題の出現等、経済社会の大きな変化に直面している。よって、1年ごとの「知的財産推進計画」の見直しのみではなく、中長期のビジョンを政府全体で共有し、将来の社会に必要な知財制度を設計する必要がある。こうした問題意識から、知的財産戦略本部の下に、新たに「知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会」を設置し、2025~30年ごろの社会を見据え、中長期の「知的財産戦略ビジョン」(以下、ビジョン)策定の検討を行う。

ビジョンを策定するうえでは、将来どのような社会に向かうのかという時代認識を共有することが必要である。一つの例として、すでに政府・経済界は、将来的に「Society 5.0」という「超スマート社会」を実現するという方向性を共有している。

また、イノベーションのあり方も変質している。総じて、20世紀は、供給より需要が大きな社会であったが、21世紀は、需要より供給が大きな社会、すなわち、需要側が市場をリードする社会である。こうした社会では、企業は、人々の需要は何かを理解したうえで、新たな財・サービスを提供する必要がある。企業としては、さまざまな外部の知と融合するために「オープン・イノベーション」や需要者・生活者の視点を重視した「デモクラティック・イノベーション」、さらにデータを活用した「デザイン思考」が必要になるだろう。

ビジョンにおいては、社会の変化をとらえて、将来の新しい価値創造の姿を描いたうえで、知財のあり方を考えたい。例えば、「所有」から「シェア」を重視する社会になれば、権利を独占して守ることより、多くの人が知財を利用することから大きな価値が生まれるチャンスが増えるだろう。データのプラットフォームの重要性が増せば、データのオープン化の必要性が高まるかもしれない。こうした点を専門調査会で議論していきたい。

なお現在、ビジョンの検討とは別に、知的財産戦略本部の下に「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」を設置して、「知財を含む無形資産の見える化」「知財のビジネス価値の定量化」等について検討を行っているところである。

【産業技術本部】