Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月11日 No.3345  第4次産業革命時代を生きるために必要なスキル -シュライヒャーOECD教育・スキル局長に聞く/教育問題委員会企画部会

説明するシュライヒャー局長

経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は11月27日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長から「OECD Skills Outlook 2017」に基づき、第4次産業革命時代を生きるために必要なスキルについて説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ グローバル化の時代を生き抜くために必要なスキル

グローバル化の進展により、産業構造が大きく変化しつつある。先進国では、「生産」や「組み立て」といった仕事がもたらす付加価値が低下し、代わって「研究開発」や「サービス」などが高付加価値産業となった。日本は、輸出中心の産業構造となっているため、継続的に国内雇用を維持・創出していくためには、こうした高付加価値産業に対して政策を注力していく必要がある。

また高学歴の労働者は高い賃金を得られる一方、低学歴の労働者はより貧しくなるという二極化が進んでいる。特に、高いスキルを有する人が集まる会社やグループでは、おのおのが保有する高いスキルを共有することで、自身のスキルアップを容易に行うことができる。一方、低いスキルの労働者が集まる所では、スキルアップが難しく、さらに所得・能力の格差が拡大する一因となっている。

こうした格差の拡大は、経済成長の鈍化や社会の不安定化につながる可能性があるため、政府や企業などによる労働者のスキル向上に向けた取り組みが急務となっている。

■ 日本のデジタルスキル等への懸念

各国の成人男女を対象に行ったスキルに関する調査結果をみると、基礎学力の面では、日本は米国の3倍高い評価を得ている。一方、デジタルスキルなど先端のスキルになると評価は低く、例えば若い世代ではOECD平均並みにとどまっている。これに対してシンガポールをはじめ新興国では、若い世代のデジタルスキルが高く、日本の競争力の比較優位性が低下する懸念がある。

ただし、国際的な比較優位性の低下が、必ずしも労働者のスキル低下を表しているわけではない。日本は、米国や英国と比べて、コンピューターや研究開発などの面で高いスキルを持った人が多い。またドイツ、韓国、ポーランドのように、グローバル・バリューチェーンに積極的に参加することで、さらに高いスキルを持つ労働者を育成すれば、生産性の向上を図ることができる。

■ スキル向上政策の意義

今後、政策の面でスキル向上を後押しするためには、教育やトレーニングの質の向上、「学び」の場と「職」の場をつなぐこと、スキル向上の障害を取り除くことに焦点を当てることが重要である。

また、同じ資格を有する人であっても、実際のスキルに個人差があることが多く、資格の有用性、信頼性向上に向けた政策を推進することが重要である。特に日本の場合、デジタルスキルに関する資格を中心に整備していくのがよい。

さらに、個々が保有するスキルを、社会全体としてより効率的に活用することが求められる。例えば、職場環境などの制約によって、スキルを活かしきれていない女性が多い。また、外国人労働者が、特定の資格を有しているとしても、それを活かした職に就けないという障壁もある。

この点、米国は、国民の教育水準自体は低いものの、個々が有するスキルを活用することには長けている。日本は、高いスキルを有する人が多いにもかかわらず、それを活かしきれていないため、政府や企業が連携し、社会全体として自由な労働市場、労働環境を構築していくことが求められる。

【教育・CSR本部】