Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月18日 No.3346  諸外国の国民IDカードとeIDの動向について聞く -行政改革推進委員会企画部会・情報通信委員会企画部会

経団連は12月21日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会企画部会(大久保秀之部会長)と情報通信委員会企画部会(武山芳夫部会長)の合同会合を開催し、国際社会経済研究所の小泉雄介主幹研究員から「諸外国における国民IDカードとeIDの動向」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 国民IDカードとeID

国民IDカード制度は、英国や米国など一部の先進国を除き、多くの国で導入されている。利用方法は主に2つある。

1つ目は「物理的な身分証明書」としての利用である。行政手続きや運転免許証・パスポートの取得、銀行口座の開設に際しての本人確認、警察による職務質問時の身分証明等が挙げられる。交通機関の切符購入(ミャンマー)や郵便物の受け取り(キューバ)にIDカードの提示を求める国もある。

2つ目は「電子的な身分証明書」(eID)としての利用である。従来、IDカードのICチップに搭載した公開鍵基盤(PKI)の電子証明書によって実現するケースが多かった。エストニアでは、(1)公共交通機関の乗車券(2)運転免許証や健康保険証、EU圏内でのパスポートの代替(3)インターネット投票(4)市民ポータルへのログイン(5)オンラインバンキング――など、IDカードを利用した多種多様なサービスが提供されている。

しかし、国民IDカードにeID機能を搭載した場合、ICカードリーダーがなければ電子的な利用ができないという問題がある。そこで諸外国では、(1)携帯電話やパソコンのハードディスク、USBメモリーに公的な電子証明書を格納(2)役所や銀行にカードリーダー付きの端末を設置(3)スマートフォンを用いた電子証明書の読み取り――等の事例がみられる。セキュリティより利便性の側面を重視した結果、単なるIDとパスワードをeIDにする国や、生体情報をeIDの手段とする国もある。

■ 番号制度を活用した電子行政サービス

諸外国では、番号制度に基づくさまざまな国民サービスを提供している。スウェーデンでは、住民登録データベースから行政機関や民間企業に住民登録・変更情報が提供される。また、雇用主や金融機関等が提出した法定調書の情報を名寄せして納税者に提示する「記入済み確定申告制度」が導入されている。

このほかにも、行政機関が保有する自分の個人データの閲覧等が可能なポータルサイト(オーストリア)、行政手続きに利用するために各省庁が保有する住民情報を集約して個人データを共有するプラットフォーム(シンガポール)、自宅やオフィスのPCで各種証明書を発行・利用するサービス(韓国)、民間の認証機関が発行するIDで政府のオンラインサービスにログインできる仕組み(英国)などが存在する。

電子行政サービス普及のカギは、オンライン上での個人認証である。わが国ではe-Taxやマイナポータルの利用にあたり、マイナンバーカードに搭載された公的個人認証サービスの電子証明書が必要とされているが、さらなる利用促進に向け、より簡易な個人認証手段も可能とするなど、利用のハードルを下げて利便性向上を図るべきである。

【産業政策本部、産業技術本部】