Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月18日 No.3346  解説「有期契約の無期転換ルール、本格スタート」<上> -無期転換ルールと特例制度

労働契約法第18条の無期転換ルールが施行されてから、2018年4月1日で5年が経過する。有期労働者を雇用する企業は、同ルールを契機とした労使紛争が生じることのないよう適切に対応することが求められる。

◆ 無期転換ルールとは

有期契約の無期転換ルールは、同一の使用者との間で反復更新された有期契約が通算5年を超えた場合に、有期労働者に無期契約への転換申込権が発生し、労働者が権利を行使すると、使用者はその申し込みを承諾したものとみなす仕組みである。有期契約の適正な利用と有期労働者の雇用の安定を図ることを目的として導入された。

契約期間の通算は、同ルールが施行された13年4月1日以後の日を契約期間の初日とするものから開始され、例えば、1年契約を更新するケースでは、18年4月1日以降に申込権が発生する見込みである。ただし、通算契約期間は、契約期間が1年以上の場合は「6カ月以上」、1年未満の場合は「契約期間の2分の1」のクーリング期間(無契約期間)をおくことでリセットされる。

5年を超えて有期契約を更新するかどうかは、あくまで企業の判断に委ねられている。企業は、自社における有期労働者の雇用状況を確認するとともに、要員計画等を踏まえ、無期転換ルールにどのように対応するのか方針を定めて準備する必要がある。また、対応方針を有期労働者に丁寧に説明することも重要である。

なお、有期労働者の雇止めに関しては、労働契約法第19条(雇止め法理)に基づき、(1)有期契約の反復更新により、無期契約と実質的に異ならない状態となっている場合(2)有期契約の期間満了後の雇用継続について、労働者に合理的な期待が認められる場合――には、一定の制限がかかることに留意する必要がある。

無期転換の仕組み

◆ 無期転換ルールの特例制度とは

無期転換ルールには、有期雇用特別措置法(15年4月1日施行)により、無期転換申込権発生までの期間5年の特例を認める制度が設けられている(以下、特例制度)。

特例制度は、(1)5年を超えるプロジェクトに就く高度な専門的知識等を有する有期労働者(高度専門職)(2)定年後に同一の事業主(高年齢者雇用安定法が規定する特殊関係事業主を含む)に有期契約で継続雇用される高齢者――を対象としている。

特例の適用を希望する事業主は、対象労働者の雇用管理措置等を記載した申請書を本社・本店を所管する都道府県労働局か労働基準監督署へ提出し、認定を受けなければならない。

認定を受けると、(1)高度専門職についてはプロジェクト完了までの間(最大10年)(2)高齢者については継続雇用されている間(上限なし)――は無期転換申込権が発生しない。なお、特例により有期労働者を雇用する場合、事業主は、有期労働者との紛争を防止する観点から、有期契約の締結・更新時に無期転換申込権が発生しない期間を書面で明示しなければならない。

特例の申請手続きに関して厚生労働省は、全国的に申請数が増加していることから、18年3月末日までの認定を希望する場合、18年1月までに申請するよう促している(申請はe-Govによる電子申請も可能)。

【労働法制本部】

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