Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月8日 No.3349  「今後の大学改革が目指すべき方向性」

経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は1月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、今後の大学改革が目指すべき方向性について、京都大学の佐藤邦明総長特命補佐兼企画・情報部企画課長兼プロボストオフィス室長から説明を聞くとともに意見交換を行った。佐藤氏の説明の概要は次のとおり。

■ 京都大学の特色

京都大学は3万人の構成員、1700億円の財政規模を持ち、10学部、18研究科、35研究所・センターから構成されている。1700億円の財政のうち540億円が国からの運営費交付金であるということは、トップ国立大学として「真の“世界級の大学”」を目指すべき役割を担っている。すなわち、人類に貢献する学問を継承・発展させる大学で、研究レベルが世界級で一流・超一流の研究者が在籍し、世界中のトップレベルの学生が集う大学、またそれを支える組織・財政基盤が確立されている大学である。もともと、「京大は、おもろい」をうたい、常に独創的研究のフロンティアを開拓してきた。西田哲学もiPS細胞も、そうした伝統のなかから生まれたといえる。

■ 課題解決に向けた施策

しかしながら近年、若手教員の減少が「研究力の低迷」につながるとして課題となっている。研究力を強化するためには、世界的競争や刺激のある環境を整備したり、大学独自の財源を充実させたりするなどが必要となるが、いずれも人やカネ、時間を多く要する。

また、別の課題として「国際通用性や多様性の高い体制の整備」がある。現在、京大には大学院を含めて約2200人の外国人留学生が在籍しているが、アジア出身者が8割を占めており、他地域の出身者は少ない。世界中から優秀な人材を獲得するためには、魅力的かつ多様なプログラムの提供はもとより、戦略的にリクルーティングを行ったり、キャンパスそのものも多様性を許容するものに整備する必要がある。

■ 自律的経営に向けて

こうした課題の解決に取り組み、自律的な経営を実現するために、現在、(1)財務基盤の強化(2)ガバナンス体制の強化(3)徹底した分析と戦略的展開を行うための機能の充実――に取り組んでいる。特に(2)では、昨年10月に京大版プロボスト制(注)を導入。徹底した情報分析のもと、エビデンス・ベースの中長期計画を立案し、それを着実に執行・検証する体制とした。

■ 「世界級」を確立するために大学改革が目指すべき方向性

急速な技術革新による社会のニーズ変化や18歳人口の減少などに対応し、「世界級」を確立するために今後の大学改革が目指すべき方向性とは、(1)財源の拡充・多様化(2)組織(大学)の体質(制度やマインドセット)の改善(3)大学自身の多様性の確保(4)大学の教育と研究に対する社会からの理解促進――である。大学が自らの責任において改革を積極的に行うことはもちろん、財源確保に向けた国の規制緩和政策の推進や企業の人的・財的支援、また国民からの理解なども不可欠となる。将来、どのような国をつくりたいか、そのために大学にどのような人材育成を期待するかを、ぜひ真剣に考えてほしい。

<意見交換>

説明後の意見交換では、「プロボスト制は京大特有のものか」との質問に対して、佐藤氏から「日本の国立大学では京大が初めて導入した。現在、他大学も導入を検討していると聞いている。大学におけるガバナンス体制の強化を考えると、今後、間違いなく広がるだろう」との回答があった。

(注)プロボスト=法人・大学の将来構想や組織改革等の包括的または組織横断的課題について、総長、理事または部局・学系等からの要請を受けて、総長、理事と部局・学系等の間の連携または調整を行い、戦略を立案するとともに、策定された戦略の推進に向け、調整を図るもの

【教育・CSR本部】