Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月8日 No.3349  COP23と2018年の地球温暖化対策動向/(3)日本へのインプリケーション

昨年11月6~18日にドイツのボンで開催されたCOP23(国連気候変動枠組条約第23回締約国会議)に参加し、パリ協定実施に向けた詳細ルールの策定交渉の状況を確認するとともに、各国政府・産業界関係者等と意見交換を行った。それを踏まえ、COP23と今年の地球温暖化対策の動向等を3回にわたり解説している。
最終回となる今号では、日本の政府・産業界の課題、日本へのインプリケーションについて考えてみたい。

■ 見本市化・美人コンテスト化するCOP

前号で述べたようにCOPの見本市化、美人コンテスト化が進みつつある。プレッジ&レビューは一度出した目標はきちんと守らないと国際的に面目を失うという「name and shame」に立脚したシステムだが、「高い目標を設定しないと恥ずかしい」という仕掛けもビルトインされている。グローバルストックテーク(進捗評価)やタラノア対話(2018年の促進的対話)において、1.5~2℃目標を達成するためには現在のNDC(国別削減目標)では不足だというメッセージが繰り返されるだろう。こうした圧力への耐性は各国により千差万別であろうが、日本はその真面目さゆえに身の丈を超える目標値を提出し、その達成のために自縄自縛になるリスクが最も高い。

先般の広島高裁決定の事例にあるように原子力発電所の再稼働、運転期間の延長への道は決して平坦ではなく、排出削減目標26%のさらなる引き上げは非現実的でしかない。大幅削減は野心的な目標設定でもたらされるものではなく、必要な技術が十分競争的で利便性の高いものになって初めて実現する。日本が目指すべきは、技術開発目標であり、京都議定書以来、温暖化論議を支配してきた空虚な削減目標ではない。雰囲気やムードに流されず、足元の状況をしっかり見据えた現実的な対応が必要だ。

■ 国境を超えたアプローチの対外PR

タラノア対話にはさまざまなインプットが慫慂(しょうよう)されている。日本の政府、産業界は長期地球温暖化対策プラットフォームに盛り込まれた「3本の矢」の考え方を国際的に提唱していくべきである。現在、国連で行われている議論は、生産ベースの国内排出量削減、各産業バウンダリー内の削減にとらわれている。「クリーン技術の海外移転による貢献」「優れた技術、中間財をグローバルサプライチェーンに供給することによる貢献」「イノベーションによる貢献」の考え方は従来とは異なる新たなアプローチを提供するものだ。3本の矢を国連の枠組みやルールに反映させることにこだわる必要はない。日本の貢献を透明性のある方法で試算し、対外PRするという図太さが求められる。

■ 石炭悪玉論への対応

今回のCOP23で目立った石炭悪玉論は1E(環境)に基づく一方的なものであり、アジア諸国が自国の経済発展のためにクリーンな石炭利用を必要としているのは明らかだ。脱石炭火力連合が参加国を増やそうとしているなかで、3E(経済、エネルギー、環境)の観点から各国の実情に応じ、クリーンコール技術を含む技術ミックスを支援するという現実的なアプローチを志向する国との連携を模索すべきだ。COPのサイドイベントなどでアジア諸国のエネルギー政策担当者が自国のエネルギーミックスにおけるクリーンコール技術の位置づけについて語る機会を設けることも一案だ。1Eしか考えない陣営からの批判を恐れて3Eを重視する政策当局が沈黙を守るのでは、COPの場と現実世界の乖離は広がるばかりだろう。

■ 長期戦略とカーボンプライシング論への対応

18年のタラノア対話の実施や19年に日本がG20議長国になること等から、18年から19年にかけて内外の環境関係者がカーボンプライシング導入論を強めることが見込まれる。炭素税、排出量取引等の明示的カーボンプライシングの問題点については21世紀政策研究所の報告書「カーボンプライシングに関する諸論点(2017年7月)」(21世紀政策研究所のウェブサイトを参照)において論じているが、わが国のエネルギーコストの高さ、暗示的炭素価格の存在、国際競争力、経済への影響等、引き続き理論武装・発信が必要になる。また「日本企業が温暖化防止のコスト負担を忌避している」との誤解を防止するためにも、コスト負担の見える化、民間部門が自主的に設定するインターナル・カーボンプライシング等の手だてを考えておくことも重要である。

【21世紀政策研究所】

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