Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月22日 No.3351  「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の司令塔強化」 -CSTIの上山議員が常任幹事会で講演

講演する上山議員

経団連は2月7日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の上山隆大議員から、「CSTIの司令塔強化」と題する講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 政府の研究開発投資予算の再定義

研究開発投資は国家の成長のエンジンである。これまで、政府の予算においては科学技術や研究開発に関する明確な定義がなく、何を科学技術経費とするかは各省庁の判断に委ねられていた。これでは海外とも比較可能な、政府としての科学技術関係予算額がわからない。そこでCSTIではすべての科学技術関係予算について、詳細な分類基準を示したレビューシートをあてはめ、科学技術イノベーション推進に資する事業を再定義し、特定した。

特定された事業のなかには、純粋な研究開発とはいえないが、見方によっては大きな付加価値を生み、GDPの成長に貢献するものもある。例えば公共事業で橋の建設を行う際、新しい材料やイノベーション技術を採用したものは、科学技術予算に分類した。CSTIではこのように定義した科学技術予算3.5兆円を、毎年さらに3000億円以上増額することを目指している。

■ 大学「運営」から「経営」へ

世界の研究大学は「知識産業」と化し、成長産業となっている。他方、日本では公費に依存した管理型の大学「運営」が続いている。知識産業の担い手として、大学の「教育」から「経営」を切り離し、イノベーションの拠点となる組織へと変えていく必要がある。エビデンスに基づいて、大学の有するシーズと政府、民間のニーズとをマッチングすることも必要だ。

大学を民間資金も活用した「経営」する組織とするためには制度面の整備も不可欠である。米国の大学は公的資金だけでなく、民間からの寄付で強固な財政基盤を築き、研究開発に投資している。ハーバード大学では4兆円の資産を持っているが、その基盤となっているのは個人の寄付である。寄付者は保有する株式や不動産のような評価資産でさえ、これを寄付すると税負担の軽減措置を受けることができる。また、大学発ベンチャーを創出し、革新的技術による新製品、新サービスの増加につなげていくために、(1)国立研究開発法人がベンチャーへの投資をしやすくする(2)ベンチャーが国立大学等から研究開発資金を確保するための対価として株式や新株予約権を用いることができるようにする――ことなどが重要である。

【総務本部】