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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月8日 No.3353 強風にめげず、米国政治、日本経済、通商問題を議論する -ワシントン・リポート<32>

3月2日、朝起きると、「強風で連邦政府閉鎖のため在宅勤務に」とのメールが入った。外は曇りで雲の流れが速く木々は揺れているが、道行く人は犬を散歩させている。豪雪による政府閉鎖は経験したが強風は初めて。晴れ間が広がり拍子抜けで外に出てみたが、体が浮くような突風が吹き部屋にUターン。その後、停電。アパートの自家発電では配電ルートが絞られ、エアコンは入らず夜のシャワーもぬるま湯だった(停電は2日間続いた)。

しばらくして日米研究インスティテュート(USJI)から、夕刻の講演会・レセプションを決行するとのメールが来た。USJIは、2009年4月に日本を代表する大学が産業界と共同でワシントンDCに設立し、来年10周年を迎える。

夕刻、強風のなか会場に着くと、浦田秀次郎早稲田大学教授が「保護主義の台頭と日本のアジア太平洋通商戦略」、前嶋和弘上智大学教授(21世紀政策研究所米国プロジェクト研究副主幹)が「トランプ政権の現在と2018年中間選挙の展望」について講演するところで、USJIを支援する日本企業関係者を中心に約50名が集まっていた。トランプ大統領が通商拡大法232条に基づき、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課す方針を表明した直後とあって、両教授の説明に関心が集まった。

浦田教授は、18年も世界経済・日本経済は堅調な成長が予想されるが、リスク要因も存在するとして、保護主義の台頭、貿易政策の不確実性増大への懸念を指摘した。日本経済が人口減少・高齢化の進展に直面し、構造問題への対応が課題となっているなかで、日本のアジア太平洋通商戦略が重要な意味を持つと説明し、TPP11の早期批准・発効と加盟国の拡大が重要と指摘した。

前嶋教授は、トランプ大統領が方針表明に続いて「鉄がなければ国はない」とツイートしたと紹介しつつ、トランプ政権の現状を説明した。トランプ政権は、政治的分極化、実質的な分割政府、政治不信、国際情勢の変化という逆境からのスタートを強いられたが、経済成長、規制緩和、腐敗撤廃、保守派判事の任命、税制改革などの「成果」を挙げた。しかし、その評価については分極化のなか、意見が分かれる。中間選挙では、大統領の政党が議席を減らすのが定説としつつ、穏健派共和党議員の相次ぐ引退、投票率、北朝鮮やイランの情勢などの影響をみていく必要があると説明した。

トランプ大統領の方針表明の背景として、米商務省は、鉄鋼、アルミニウムの輸入は米国の安全保障を脅かすとして、国内製鉄所の稼働率を上げるために輸入制限が必要との調査結果をまとめている。ロス商務長官は、先日、上院オフィスビルでのレセプションでお会いした時も、日本企業の各州への投資を歓迎し、経団連の役割も評価されていたが、商務省の調査結果は保護主義的色彩が濃いといわざるを得ない。全米商工会議所のセミナーでは、対米投資の重要性を強調するムニューチン財務長官に、NAFTA再交渉で「do no harm」が維持される可能性を質問したが、互恵的で公正な貿易が重要との答えにとどまった。目が離せない状況が続いている。

(米国事務所長 山越厚志)

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