Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月22日 No.3355  米国通商政策に関する懇談会を開催 -ピュー・リサーチ・センターのストークス氏と意見交換/アメリカ委員会企画部会

経団連のアメリカ委員会企画部会(守村卓部会長)は2月28日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、米調査機関ピュー・リサーチ・センターのブルース・ストークス部長から、米国内の政治的分断状況とトランプ政権に対する米国民の評価について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 米国における分断

トランプ政権下の米国において、社会・政治の分断が顕著にみられる。その背景には、社会構造の変化がある。ここ50年で白人以外の人種割合は3倍に増加し、大学教育を受けていない白人男性の割合は75%から39%にまで激減した。白人男性の実質収入は減少傾向にあり、これまで多数派だった大学教育を受けない白人男性には二流意識が生まれた。こうした層がトランプ支持に回っている。

1994年以来アメリカ人の価値観について調査を続けてきた。共和党と民主党の意見は以前から違ってはいたものの、近年、両者の価値観の乖離がより顕著になっている。個人ベースでの分断も進んでいる。共和党員と民主党員で、友人関係、ニュースソース、住みたい場所までがはっきり分断され、現在のアメリカは、2つの違う国が1つに共存しているような状態である。また、共和党員の45%が「民主党員は国家の脅威」、民主党員の41%が「共和党員は国家の脅威」と考えており、互いに妥協する方法を見つけるのは困難を極めている。

■ 国内・世界的課題の見方

米国民にとっての最大の懸念事項はテロリズムである。通商問題については、皆意見を持っているものの、関心は例年高くない。大統領選挙前には、51%の米国民が「自由貿易は国の経済にとってよい」と考えていたが、選挙直後には45%に低下した。すべての大統領候補が自由貿易に反対する演説を行ったことが要因と考えられ、選挙期間中のレトリックが米国民の考え方に大きな影響を及ぼすことがわかる。

また、国際的課題についての米国民の意見も、党派により大きく分断される。「世界から、政策により評価されたいか、それとも力により評価されたいか」という問いに対して、民主党員は「政策」、共和党員は「力」と答えた。また、「外交政策について妥協すべきか、それとも単独路線を行くべきか」という問いについては、民主党員は「妥協すべき」、共和党員は「単独路線を行くべき」と回答している。この調査結果から、トランプ大統領の支持層は、「力により世界から尊敬されたい。通商等の外交諸課題については独自路線で行くべきであり、妥協すべきではない」と考えていることがわかり、大統領自身もそれを理解し、その価値観を反映している。

■ トランプ政権への見方

トランプ大統領の支持率は38%であり、第二次世界大戦以来最低であるが、トランプ政権の見方についても、党派での分断がみられる。「トランプ大統領は、世界でのアメリカの立場を強くしたか」という問について、共和党員は「強くした」、民主党員は「弱くした」と回答した。共和党員の回答は、世界の状況を勘案したものではないから、トランプ大統領支持者は彼が何をしてもすべてを支持するようだ。また、経済政策・核問題・移民政策への対応能力についても、共和党員は肯定的、民主党員は否定的に評価している。トランプ大統領への信任は全体として低いものの、党派間の分断は顕著である。

【国際経済本部】