Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月22日 No.3355  桜の開花を控え、中間選挙に向けて混迷深める米国政治 -ワシントン・リポート<34>

3月15日、National Cherry Blossom Festivalのピンクタイ・レセプションがレーガン・トレード・センターで開かれ、桜の開花を待ち望み、ピンク色の装いで着飾った人たちが大勢集まった。

他方、通商拡大法232条に基づく鉄・アルミニウム関税賦課、コーン国家経済会議委員長、ティラーソン国務長官の辞任、米朝首脳会談に向けた動きなどから重い空気が流れ、24日の桜祭りオープニング・セレモニーも銃規制大型デモの影響で1日延期されるなど、まだら模様の雰囲気となっている。

トランプ大統領は、秋の中間選挙をにらみ強硬姿勢に舵を切り、昨年12月のアラバマ州連邦上院補選に続きペンシルべニア州連邦下院補選で敗北するのを避けるため、鉄・アルミニウムの関税賦課に走ったとみられている。結局、同補選では、民主党のラム候補が共和党のサコーン候補を破り勝利宣言した。2002年以来、共和党が議席を維持し16年の大統領選でもトランプ氏が圧勝した選挙区での敗北はトランプ大統領にとって痛手といえるが、中間選挙での民主党優勢を占うものとはいい切れない。

ラム候補は、いわゆる「ブルー・ドッグ民主党員」あるいは穏健派共和党員に近い言動を示し、トランプ批判を避けて勝利した。民主党が、そうした候補を全米で立てれば下院奪還は間違いないともいわれるが、民主党内には「ブルー・ウエーブが来る!」(ニューヨーカー誌)とばかりに、民主党勝利を確信しイデオロギー純化を訴える声が増している。

共和党についても、トランプ大統領の鉄・アルミニウム関税賦課が共和党主流からは懸念され労働組合から歓迎されるとのねじれ現象が起きている。かたや自由貿易支持は今や民主党員に多い。両党がそれぞれ経済面でジレンマを抱えるなか、銃規制や宗教などでイデオロギー純化に向かえば、トランプ大統領が相対的に優位に立つ可能性がある。

長期的なカギは次世代が握っている。1日にピュー・リサーチ・センターが発表した「アメリカ政治における世代ギャップ」では、大統領1年目を評価する声が、オバマ政権については、沈黙世代(1928~45年生まれ)、ベビーブーム世代(1946~64年生まれ)、X世代(1965~80年生まれ)がともに50%前後なのに対し、ミレニアル世代(1981~96年生まれ)は65%と高く、トランプ政権では、沈黙世代の46%から世代が若くなるにつれ下がり、ミレニアル世代は27%と激減している。

それにもかかわらず、中間選挙が近づくにつれ両党がイデオロギー純化に走り幅広い支持をつかめないなか、トランプ大統領がキャンペーン・モードの強硬路線で支持を得ていく可能性がある。連邦議会、州政府、米経済団体・企業、シンクタンク、さらには外国経済団体・企業の出先とも連携を図り、冷静に対処したい。

(米国事務所長 山越厚志)