Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年4月19日 No.3359  産学官連携の推進に向けた産業技術総合研究所の取り組みについて意見交換 -未来産業・技術委員会企画部会・産学官連携推進部会

経団連は4月4日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会企画部会(須藤亮部会長)と産学官連携推進部会(五十嵐仁一部会長)の合同会合を開催し、産業技術総合研究所(産総研)の岡田武理事・企画本部長らから、産学官連携の推進に向けた同研究所の取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。岡田理事の説明の概要は次のとおり。

■ 産業技術総合研究所の紹介

産総研は2001年に15の研究所が合併して設立され、16年10月に特定国立研究開発法人に選定された。当研究所は、大学等で行われている学術研究・基礎研究を、民間企業に「橋渡し」する役割を担っている。

研究員は、常勤の研究職員2300人、ポスドク等の契約職員1900人、大学・企業等からの外来研究員等が5100人、合計約9300人が所属している。

総収入額約929億円のうち、664億円の運営費交付金と155億円の受託収入を合わせると、約8割が公費収入である。民間からの共同研究収入は59億円であり、19年度に138億円の民間資金獲得を目標としている。ロイター通信の「The World's Most Innovative Research Institutions」では5位であり、特許と論文の質と量が評価されている。

■ 企業との連携のスキーム

企業との連携を進めるため、産総研ではさまざまなスキームがある。

「冠ラボ」は、企業と1対1でパートナーシップを組み、企業と大型の産学連携を進めるスキームであり、規模は年間1億円以上、期間は3年以上である。

「コネクト型冠ラボ」では、異なる産業を組み合わせ、新しい産業連関を創造することを目指している。企業にとっては、業界をまたがる連携や新事業の創造が可能になる。

「カーブアウト型冠ラボ」では、大企業から研究者・技術・資金を切り出し、産総研のリソースとマッチングさせてベンチャー企業を創造することを目指している。

自社研究の選択と集中を進めている企業にとっては、核となる分野以外の分野の一流の技術を産総研が提供できる。また、現時点で収益性はなくても捨てておくには惜しい技術資源は、カーブアウト型冠ラボを用いて育成できる。

研究に対するコスト意識が高い企業にとっては、産総研が公的資金を提供することで、実質的な官民のマッチングファンドとなる。

自社領域からバリューチェーンの拡大・強化を図りたい企業には、コネクト型冠ラボを活用したり、社会実証の受け皿としたりして活用してほしい。

産総研を知らない企業には、まずは視察・見学に来ていただければ、担当のイノベーションコーディネーターを紹介する。

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経団連では、昨年11月に産総研の臨海副都心センターを視察。4月17日には、産総研つくばセンターを視察し、Society 5.0の実現に向けたIoT、センサー関連研究を見学した後、意見交換を実施している。

【産業技術本部】