Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月31日 No.3363  今後の企業と市民社会との関係について意見交換 -社会貢献担当者懇談会

説明する山岡名誉教授

経団連は5月17日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(山ノ川実夏座長)を開催した。NPO法(特定非営利活動促進法)成立から20年を迎えるなか、今後の市民社会と企業の関係の目指すべき方向について、法政大学の山岡義典名誉教授から説明を受けるとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 市民社会とは

私は現在、市民社会と企業とを結ぶ仕事をしている。私は市民を「社会の一員として自覚を持って生きる人」ととらえ、広義の市民社会を「市民の思いや立場が尊重され、その役割が最大限に発揮できるような理念的な社会」と位置づけている。

市民活動を支える制度としてNPO法ができた背景は、当時、民法の公益法人制度を変えるのが難しいと思われていたからだ。しかし、NPO法の制定10年後に公益法人制度そのものが変わり、非営利活動に関する2つの制度が並立している。今後両制度をどう整理するか議論になるかもしれないので、あらかじめ検討を進めておく必要がある。

■ 社会化された企業と市民社会との関係

企業の社会化とは「企業が持続可能な社会を重視し、よりよい社会づくりの担い手になっていく傾向」と定義しておく。そのアプローチとしては、図表で示した方法が考えられる。

従業員の参加においては、ボランティアやプロボノに加え、経験豊かな高齢者が再雇用というかたちで関わることも期待される。また、活動の企画、運営、評価等において、他組織の参加や協働を進める必要がある。その際、社内連携ではCSVの目線で企業利益にも配慮するが、企業財団や社外NPO等との連携では社会的利益を踏まえ対話するなど、CSRの視点に立った、相手の関心に応じたアプローチも肝要だ。

企業の社会化促進の取り組み方法

■ 新しい動きと問題提起

企業と市民社会の新しい関係に関する注目テーマに、SDGs(持続可能な開発目標)と休眠預金がある。

SDGsには解決すべき社会的課題が包括的にまとめられている。ただ、課題解決志向は大切だが、それ一辺倒もよくない。目標へ最短距離で取り組むばかりでなく、すぐには役に立つか否かわからない試みも大切にしてほしい。その意味では、「ワクワクする」から取り組む活動も、もっとあってよいのではないか。そのような活動から新しい社会的価値も生まれてくる。

また、今年1月に休眠預金等活用法が施行され、これから民間公益活動に対し年間約700億円が交付される仕組みができる。企業の社会貢献支出額2000億円、国内の助成財団の助成額1100億円と比べてもかなりの規模であり、企業の社会貢献や助成財団としても、もっと民間らしさを示さなければいけない。

新しい助成の仕組みができるなか、事業評価はより重要なテーマになるだろう。しかし、近視眼的な評価ばかり求められると、すぐに評価されるかどうかが助成の基準になって内容が偏る。新しい社会的価値を生む素地のためには、長期的視点での評価も必要である。

【教育・CSR本部】