Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年7月12日 No.3369  デジタルトランスフォーメーションの推進に向けた経済産業省の取り組み聞く -情報通信委員会企画部会

経団連は6月26日、都内で情報通信委員会企画部会 (武山芳夫企画部会長)を開催し、経済産業省商務情報政策局の渡邊昇治総務課長、成田達治情報産業課長、中野剛志情報技術利用促進課長から、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ IT戦略をめぐる諸情勢

中国や欧州連合が戦略的にIT政策を推進しており、今後、アジア・太平洋地域のなかから追随する国が出てくるかもしれない。こうしたなか、日本としては政府部門とともに民間部門のDXの推進が求められている。

■ 民間部門のDXに向けた課題

老朽化・複雑化・ブラックボックス化した情報システム(レガシーシステム)が8割以上の大企業で残存し、約7割の企業が、老朽システムがDXの足かせになっていると感じている。これまで短期的観点でのシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守・運用費が高騰する「技術的負債」が生じている。その結果、民間部門におけるIT関連費用の約8割が現行システムの維持管理に使われており、戦略的なIT投資に資源が振り向けられていない。

■ 老朽化した基幹系システム刷新の必要性

昔から議論されていることではあるが、レガシーシステムを放置しておくと大変なことになる。旧システムを担った人材の引退やITシステムのサポート終了等によるシステムの保守・運用の困難性、システムの老朽化・複雑化に起因するサイバー攻撃や事故・災害に対するリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、年間12兆円程度となる可能性がある。加えて、システムの老朽化・複雑化のためにIoTやAI等の新技術に対応できないことによる機会損失が30年時点で34兆円程度に上る可能性もある。システムの担当者は事態の重要性を理解しているが、対策にカネと時間がかかることから、経営トップの理解が得られていない。

■ 民間部門におけるDXに向けた検討

経産省は「デジタルトランスフォーメーションに向けた検討会」を設置し、以下のような課題について検討している。

  1. DXに向けたシステム刷新等の意義についての、経営者を含めた理解促進
  2. 膨大な費用と時間を要するITシステム刷新の方策
  3. DXを推進するためのIT人材の育成

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講演の後の意見交換では、出席者から、「国内外の状況を正確に把握したうえでDXを進めるべきだ」「ITシステムの刷新は、ビジネスプロセスの見直しと連動させて行うことが必要」「システムの刷新は仕事の効率を高めることから、政府の働き方改革と連動してDXを進めるという視点もあり得る」「DXを進めるため、中小企業も含めた、きめ細かい支援が必要」といった意見が出された。

【産業技術本部】