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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年7月26日 No.3371 大統領選挙と議会選挙結果、トルコの内政・外交等について聞く -日本トルコ経済委員会

説明する今井氏

トルコでは6月24日、大統領選挙と議会選挙が当初予定より1年半近く前倒しで実施され、再選されたレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のもとで新政権が発足する運びとなった。

そこで経団連の日本トルコ経済委員会(山西健一郎委員長、斎藤保委員長)は7月9日、日本貿易振興機構アジア経済研究所の今井宏平研究員から、ダブル選挙の結果やトルコの内政・外交の展望等について説明を聞き意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ ダブル選挙の結果から読み取れること

昨年4月16日の国民投票の結果、トルコでは憲法が改正され、議院内閣制から、大統領に権力を集中させた新たな大統領制に完全移行した。こうしたなか、エルドアン大統領が率いる与党・公正発展党(AKP)と協力関係にあるナショナリスト政党・民族主義者行動党(MHP)のデヴレット・バフチェリ党首の進言を受けるかたちで、1年5カ月前倒しでダブル選挙を実施することとなった。

大統領選では、最大野党で中道左派の共和人民党(CHP)のムアッレム・インジェ候補がどこまで健闘するかが注目されたが、結果的にエルドアン氏が52%、インジェ氏が31%の票を獲得した。

一方、議会選挙では、AKPが600席の総議席の過半数を確保できるかが争点となったが、結果は、トルコ全土においてAKPが295議席(43%)、イスタンブール等の西部大都市を中心にCHPが146議席(23%)、トルコ東部を中心にクルド系左派の人民民主党が67議席(12%)、MHPは49議席(11%)を獲得する結果となった。

今回のダブル選挙では、エルドアン大統領が勝利したとはいえ、同大統領の権力集中を警戒し、また、経済状況が好転しないことも影響し、与党AKPは過半数を取ることができなかった。その一方、AKPと選挙連合を組んだMHPは、事前の世論調査では6~7%の得票率とみられていたが、結果的に10%以上の得票率、49議席を獲得して選挙連合として過半数を得た。これにより、MHPが政治に及ぼす影響が大きくなることが予想される。この意味で、ダブル選挙の最大の勝者はバフチェリ党首といっても過言ではない。

■ トルコの内政・外交をめぐる今後の展望

今後の基本的な内政・外交に大きな変化はないが、前述したように、AKPが一人勝ちできなかった選挙結果を受けて、MHPの意向が強まる可能性が高い。例えば、非合法武装組織であるクルディスタン労働者党(PKK)については、国内の取り締まりを強化するとともに、シリアとイラクにおけるPKKへの攻撃の継続等、徹底した対策を実施していくであろう。

その一方、外交面でのMHPの関与は強くないため、例えばEUとの関係改善については、AKPが主導して進めていくだろう。

なお、2016年7月のクーデター未遂事件に伴い発令され、通算7度の3カ月延長がなされた国家非常事態宣言は、7月19日に終了する予定であるが、いつでも大統領権限で発令することが可能なため、今後も予断を許さない。

【国際経済本部】

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