Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月2日 No.3372  夏季フォーラム2018 -第1セッション「国際政治情勢/グローバリゼーションを巡る動向」

カプラン氏

夏季フォーラム第1セッションでは、ユーラシアグループ・シニアアドバイザーのロバート・カプラン氏から「国際政治情勢/グローバリゼーションを巡る動向」をテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。講演のポイントは次のとおり。

現在、国際情勢は大変深刻な状況にある。注目すべきは、技術の進歩によって世界がより狭くなっている点だ。南シナ海で紛争が起こった場合、ユーラシア全体に多大な影響が及ぶだろう。あらゆる危機が相互に複雑に絡み合い、世界は不安定になりつつある。例えば、中国とインドは歴史的にさほど多くの交わりなく、それぞれ別の文明を築きながら発展してきた大国であるが、昨今では天然資源や他国への軍事的関与などを巡って対立を深めている。

■ 中国の影響力の拡大

習近平国家主席による一帯一路構想は、中央アジアにおける中国の国家的ブランド事業であるだけでなく、イランとの関係においても重要な意味を持っている。中国は、さまざまなパイプラインを中央アジア全体に配置することでイランとのつながりを構築してきた。すなわち資源の獲得に成功したのだ。中国とイランは、もはや容易に揺るがないほど強固な関係にある。かつて米国がカリブ海を支配し勢力を拡大していったように、中国も南シナ海を戦略的に支配し影響力を拡大しようとしている。一帯一路構想によって、いまや新しい中華帝国が誕生しつつあるといえるだろう。

■ 日本への示唆

米国はこれまで自由資本主義を中核的価値観としてきたが、現在、そのモチベーションは低下しつつある。TPPからの離脱表明は、トランプ政権の最大の過ちといえる。われわれは自由貿易が正しく、恒常的な姿と考えがちだが、地政学的な紛争の時代となって保護主義が台頭し、脅威にさらされる時代へと移行している。第二次世界大戦後、米国の対アジア政策は予見可能であったが、世界における米国の位置づけが低下しつつある。今の米国がグランドストラテジーを持っていないためだ。今後日本は米国を頼るのではなく、アジア諸国との安全保障面ならびに経済的な連携を強化していく必要がある。これにより、中国の台頭をコントロールすべきだろう。

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その後、中国・EUの今後の動向や米国の通商政策などについて、活発な意見交換が行われた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】