Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月9日 No.3373  第51回東北地方経済懇談会を仙台で開催 -「『わきたつ東北』と『Society 5.0』の共創」をテーマに

荒浜小学校を訪問する一行

仙台国際空港を視察する一行

経団連(中西宏明会長)と東北経済連合会(東経連、海輪誠会長)は7月31日、仙台市内で「第51回東北地方経済懇談会」を開催した。経団連から中西会長はじめ審議員会議長・副会長らが、東経連から海輪会長はじめ会員約260名が参加。「『わきたつ東北』と『Society 5.0』の共創」を基本テーマに懇談した。

懇談会に先立ち、同日午前中には、震災遺構仙台市立荒浜小学校と仙台国際空港を訪問。仙台市立荒浜小学校では、東日本大震災における津波の被災状況などについて、校舎内外を見学しながら説明を聞いた。また、仙台国際空港では、空港民営化の取り組みについて説明を受けるとともに、ターミナルビル内を視察した。

開会あいさつで東経連の海輪会長は、震災復興を成し遂げるまでの道のりはまだまだ長く険しい状況であり、また、東北地方は人口減少・少子高齢化が最も速いスピードで進行しているとの認識を示した。そのうえで、東経連のビジョンで掲げた「わきたつ東北」の実現に向け、「復興五輪」の具現化や自立的で強固な産業構造への転換などに積極的に取り組むと表明した。

続いてあいさつした経団連の中西会長は、震災復興に向けた課題はまだまだ多いとしたうえで、経団連としては引き続き東経連と連携しながら震災復興に力を入れて取り組むと述べた。また、わが国の成長戦略として、産業構造の変化や技術進歩をもたらすデジタル化の波を受け止めたうえで、Society 5.0の実現を目指すと表明した。そのほか、財政健全化に向けた構造改革や民間経済外交の推進の重要性を説明した。

■ 震災からの復興と交流の加速

「震災からの復興と交流の加速」をテーマとする懇談では、若者の地方への還流・定着や「復興五輪」の具現化に関する東経連からの問題提起に対し、経団連から、(1)風評被害の払拭や東北観光・産品の積極的なPRに向け、経団連では、今年度も秋に「東北復興応援フェスタ」を開催(古賀信行審議員会議長)(2)若者の地方への還流・定着には、多様な人材が活躍できる雇用の場や、優れた生活環境などを創り出すことがポイント(岡本圀衞副会長)(3)「復興五輪」に向けた東北の情報発信拠点設置は、東北の復興や魅力を世界に発信するうえで、非常に効果的な取り組み(山内隆司副会長)(4)若年層を地域に定着させるためには、大学教育だけではなく、小・中学生のころから地域社会と触れ合う機会を多く持つことが必要(岡本毅副会長)(5)東北地方におけるさらなる観光振興に向けて、地域が企画する着地型観光の推進や観光業の生産性向上が重要(冨田哲郎副会長)――との発言があった。

■ 稼ぐ力を高める

「稼ぐ力を高める」をテーマとする懇談では、東北の世界最先端プロジェクト(東北放射光施設、国際リニアコライダー(ILC))やSociety 5.0の実現に関する東経連からの問題提起に対し、経団連から、(1)Society 5.0の実現には、オープンイノベーションの推進とイノベーション・エコシステムの構築がカギであり、その意味で東北の世界最先端プロジェクトは重要な取り組み(進藤孝生副会長)(2)各地域が、課題の発見・解決や、強みや特色を活かしたベンチャー創出などを行うためには、多様な主体が連携するエコシステムの構築が重要(國部毅副会長)(3)東北地方の国家戦略特区における新しい技術の実用化に向けた取り組みは、地域の課題解決やイノベーション創出のモデルケースとして期待(小林健副会長)(4)国際的に遜色ない価格でのエネルギーの安定供給は、わが国製造業の国際競争力確保のみならず、Society 5.0の実現にも不可欠(杉森務副会長)(5)個人消費を喚起して経済の好循環を実現するため、経団連ではプレミアムフライデーを推進(石塚邦雄副会長)――との発言があった。

意見交換の後、経団連と東経連は今回の懇談会の総括として、共同声明「『わきたつ東北』と『Society 5.0』の共創による東北の新生」を締結し、両団体が協力して震災復興の加速や成長戦略の推進に取り組むことを表明した。

共同声明を締結

【総務本部】