Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月30日 No.3374  ユニバーサル社会の実現に向けた企業の取り組み聞く -生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は8月2日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会ユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を開催し、トヨタ自動車 Toyota Compact Car Company の粥川宏チーフエンジニアならびに富士通マーケティング戦略本部ブランド・デザイン戦略統括部の森淳一氏、吉本浩二氏から、両社の取り組み事例について聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ トヨタ自動車「JPN TAXIが目指すもの」

超高齢化社会への対応が求められるなか、トヨタ自動車はユニバーサル化への対応、環境に優しいまちづくり、観光立国の実現という観点から、2017年に新たにJPN TAXIを導入した。

JPN TAXIは福祉車両の置き換えではなく、子どもから外国人、障がい者まで、あらゆる乗客、ドライバーに乗ってもらえるよう、性能、利便性を向上させている。具体的には、広い空間やフラットなフロア、グリップや機器の配置・配色等で工夫がされており、LPGハイブリッドによる環境負荷の低減や安全装備の最大化、修理負担の軽減を目指した耐久性も実現。さらに、観光客への「おもてなしの心」を表現したデザインとするとともに、タクシーとして広く普及させるべく、日本の伝統色である深藍で統一するというアイコン化を図り、格式を保ちながらも親しみやすさを感じられるよう工夫した。今後は、さらなる改良を重ね、誰もが乗りたくなるタクシーとしての普及を目指す。

■ 富士通「富士通のユニバーサルデザイン」

富士通は「共創」をキーワードに、ICTの活用により新しい社会参加を促すサービス提供に注力している。例えば、複数人の音声をリアルタイムで表示することで、聴覚障がい者が会議に参加しやすくするためのコミュニケーションツールを開発している。IoTやAI、クラウドサービスを活用することで周囲とのつながりを生み出し、より幅広い支援を可能とする取り組みを進めていく。

また、アイデア段階ではあるが、社内外の障がい者で構成される共創ワークショップで、車いす使用者がバスに乗車する際、居合わせる乗客が積極的に手伝うことができるようにするための仕組みづくりについて検討した。車いす使用者がバスに乗車する際、乗客に待ってもらうことから、車いす使用者に心理的負担がかかるとともに、乗客のなかには苛立ちを感じてしまう人もいるのが実情である。そこで、「介助補助資格」を設定し、有資格者の乗客による積極的な支援を促す、あるいは、ICTを活用して乗車を事前に通知することで、使用者の負担感や乗客の戸惑いを軽減するといった提案が出されている。今後は、こうした取り組みをサービスインしていくにあたり、ハードウエアの改修だけでなく、ICTを活用した心のバリアフリーについて、多様なステークホルダーとの共創が不可欠となる。当社もICTの活用を通じてユニバーサル社会の実現に取り組む。

【産業政策本部】