Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年9月6日 No.3375  「公益通報者保護専門調査会」中間整理について聞き意見交換 -経済法規委員会企画部会

経団連の経済法規委員会企画部会(佐久間総一郎部会長)は8月21日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、消費者委員会事務局から「公益通報者保護専門調査会」の中間整理について説明を聞くとともに、消費者委員会事務局および消費者庁と意見交換を行った。

公益通報者保護法は、事業者の不正行為を通報した公益通報者を解雇等の不利益取扱いから保護するとともに、事業者の法令遵守を図る法律。専門調査会では、通報者保護や事業者のコンプライアンス経営推進のために、通報者として保護されるための要件を緩和したり、事業者に義務や罰則を課したりすることも含め議論が進んでいる。

消費者委員会事務局の説明および主な論点に対する委員の発言は次のとおり。

■ 消費者委員会事務局説明

今年1月から専門調査会を設置して検討を進めており、7月に中間整理を公表した。

中間整理では、主な論点(通報者・通報対象事実の範囲拡大、外部通報の保護要件緩和、通報を裏づける資料の収集行為の免責、通報体制の整備義務の導入、守秘義務の導入、一元的窓口の設置、不利益取扱いをした事業者に対する行政措置の導入、不利益取扱いに関する立証責任の緩和など)に関するこれまでの議論を、「方向性が示されたもの」と「今後の検討課題」に分類した。

今後は「今後の検討課題」とされた事項を中心に議論を進めていく予定。その過程で、方向性が示されたとされた事項に立ち戻って見直すこともあり得る。

■ 委員の主な発言

  1. 通報を裏づける資料の収集行為の免責
    通報のために内部資料を持ち出す行為を免責する規定を設けることは、企業秩序やコンプライアンスの点で問題がある。また、顧客の機密情報が社外に流出すれば、回復不可能な損害を被る可能性もある。

  2. 通報体制の整備義務の導入
    大半の大規模事業者はすでに通報受付体制を整備しており、あえて大規模事業者に限定して整備義務を課す必要性を感じない。
    義務を課す場合は、事業者の規模や特性に応じて柔軟に対応できるかたちとすべきだ。

  3. 通報窓口への守秘義務の導入
    多くの企業では、社内規定で通報窓口に守秘義務を設けているが、調査の過程で守秘義務を解除せざるを得ないケースに日常的に直面している。
    また、通報者は、通報前に上司や同僚に違法事案について相談していることが多く、調査を始めると同時におのずと通報者が判明してしまうこともある。こうしたケースで、通報対応の担当者が通報者から守秘義務違反を問われることがあり、担当者は日々、対応に苦慮しながら業務に取り組んでいる。
    法律上で守秘義務を課すことは、通報対応の担当者を萎縮させ、また踏み込んだ調査をためらわせることになり、内部通報制度の実効性を損なう結果となる。

  4. 公益通報者への不利益取扱いに対する行政措置の導入
    労働法分野では、労働局への申告等を理由とした不利益取扱いに対して、公表以上の行政措置を導入している個別法令は少なく、法律間のバランスを欠くおそれがある。また、公表により、著しく事業者の風評が害される可能性もある。

  5. 不利益取扱いが通報を理由としたものであることの立証責任の緩和
    労働組合活動への参加等を理由とする不当労働行為の立証責任は労働者にあることから、公益通報を理由とした不利益取扱いの立証責任を事業者に転換することは、法律上のバランスを欠く。
    また、立証責任が緩和されれば、意に沿わない解雇、配置転換等を避けるために制度が悪用されることも考えられる。

※ 公益通報者保護専門調査会「中間整理」
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/koueki/index.html

【経済基盤本部】