Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月11日 No.3380  職場のハラスメント防止対策セミナーを開催 -働き方改革 toward Society 5.0 リレーセミナー第2弾

木野氏

安藤氏

経団連は9月26日、東京・大手町の経団連会館で「職場のハラスメント防止対策セミナー」を開催し、企業の人事・労務担当者など約200名が参加した。

セミナーは経団連のハラスメント防止対策キャンペーンの一環として開催するもの。まず、弁護士の木野綾子氏(法律事務所キノール東京)が「職場におけるハラスメント対応」について、法的留意点を踏まえた解説を行った。その後、日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介代表理事が、「アンガーマネジメント~悪い叱り方、上手な叱り方」をテーマに、ワークショップを交えながら講演を行った。木野氏の講演の概要は次のとおり。

■ 職場におけるハラスメント

ハラスメントとは、法的には加害者から被害者に対する人格権の侵害であり、不法行為となる。上司が部下に対してハラスメントを行った場合、上司個人が不法行為を問われるだけでなく、会社も責任を負う。さらに、会社と従業員は雇用契約を締結し、雇用契約上の安全配慮義務を負っているので、従業員の心身や人格を守らなければならず、それに反すると債務不履行となる。職場のハラスメントを放置すると、生産性が下がり、人手不足をもたらすといった弊害も指摘されていることから、当事者だけの問題ではなく、会社全体としてハラスメント防止に取り組まないといけない。

セクシュアルハラスメントは控えるべき言動が明らかなため、パワーハラスメントに比べると予防しやすいが、お酒が入ると変わってしまう人もいることから注意が必要だ。判例でも飲み会や社内レクリエーション、社員旅行などの事例が多くある。会社の施設内ではなくとも、公的な飲み会の場合はハラスメントの対象となるので十分気をつける必要がある。

パワーハラスメントについては、現在、明確なものがない。厚生労働省の円卓会議ワーキング・グループの報告では、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と定義され、6類型が示されている。判例でパワハラと認定されたケースは、どれも一見すると業務のようにみえるケースも多く線引きは難しい。

■ ハラスメントに関する相談対応

トラブルの第一報への対応にあたっては、情報を共有する人的範囲を広げすぎると加害者と被害者のプライバシーの点で問題となるので、限られた人数で対応することが大事だ。応急措置の要否、被害者へのメンタルヘルス不調への配慮等も必要である。

会社として一番気をつけるべき点は、二次被害を起こさないことだ。調査の過程でさらに被害を受けたと感じる被害者も多いようなので、十分注意を払っていただきたい。調査の段階でも安全配慮義務が課されている。

ヒアリングの結果、懲戒処分の手続きを行う際は、事実を認定する証拠の確保、理由と処分のバランス等を確認することがポイントである。特に、会社の規定にない場合でも、「事前の告知」と「弁明の機会の付与」を行うことが最も重要である。

【労働法制本部】