Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月25日 No.3382  「カバノー効果」と中間選挙展望 -ワシントン・リポート<49>

連邦議会の中間選挙まで2週間を切ったが、その結果は10月6日に承認されたカバノー最高裁判事をめぐる共和党側の関心と熱意が投票日まで維持されるかどうかによって左右される可能性が高い。


中間選挙を歴史的にみると、2年前の大統領選からの揺り戻しがあり、特に大統領の就任後初めての中間選挙は大統領の政党が議席を減らすケースが多い。この背景に加え、就任以来続くトランプ大統領の支持率低迷、その政策よりも言動や人格への嫌悪感からくる民主党ベース支持者の盛り上がり、共和党下院議員の引退続出という要因から、当初はブルーウェーブ(民主党の大波)が起きて民主党が大勝するとの見方が大勢を占めていた。一方、今回の選挙対象となる上院改選民主党議員の多くが2016年のトランプ支持州選出であることや、共和党に有利な選挙区割、好景気によって形成されたレッドウォール(共和党の防波堤)がこれを迎え撃つという構図であった。

ところが、カバノー氏の承認を許せない民主党側による「疑わしきは罰せず」という建国以来の法の大原則を無視する姿勢や、反カバノーに徹したメインストリームメディアに対する共和党支持者の憤りが「カバノー効果」として顕在化している。そのため、最近では、怒りがすでに沸点に達していた民主党の予想投票率の変化が少ないなか、共和党は保守派のトランプ離れなどに悩んでいたところに、「カバノー効果」で民主党支持者との熱意差をほぼ解消するまでに至っている。

この結果、上院と下院では異なった動きが出ていることに留意が必要である。上院では、トランプ支持州の世論調査は共和党優位に動き、当該州の民主党議員は苦戦に陥っているほか、接戦州の共和党議員にもプラス効果が出ている。これに対して、下院の帰趨を占う指標とされる下院政党支持率(Generic Ballot)における共和党の改善はあまりみられず、民主党との差は下院敗北ラインとみられるマイナス7~8%ポイント辺りにとどまっている。この背景としては、上下院では接戦州・接戦区のタイプが異なっており、民主党が議席を守ろうとする上院の接戦州は明確な共和党支持州であるのに対し、民主党が攻勢をかける下院の接戦区は民主党優勢地盤の共和党議席であることが挙げられる。

「カバノー効果」は、共和・民主両党の対立色を深め、共和党支持州はより本来の共和党支持に傾き、民主党優勢区はより民主党色を強める結果となった。共和党支持者の盛り上がりが維持されれば、上院は共和党による多数派維持だけでなく、議席増加の可能性も十分にあるとの見方もあり、下院は依然民主党優位だが、大波が少し縮小し、堤防を越えても僅差の域を出ない可能性も指摘されている。しかし、トランプ政権における2週間は長く、これから投票日までに熱意格差が再び広がるような事態発生の可能性ももちろん否定できない。

【米国事務所】