Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月8日 No.3384  ユニバーサルデザインに関する企業の事例を聞く -生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は10月25日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会ユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を開催し、三井不動産商業施設本部商業施設運用部の永見彰資産管理・環境推進グループ長ならびに花王商品コミュニケーション部の伊東美樹UD推進室長から、両社の取り組みについて聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 三井不動産「“様々な人々と共に成長していく商業施設”を目指して」

三井不動産の商業施設におけるユニバーサル社会に向けた取り組みは、「安全・安心の確保」を前提としたうえで「お客様の満足」と「働く人の満足」、そして「社会への貢献」を柱として進めている。

「安全・安心の確保」では、施設内の段差や突起物をなくすことや、エスカレーターの表示改善や速度の変更等に取り組んでいる。また、防災訓練の実施、帰宅困難者への対応準備など、大規模災害に備えた取り組みも行っている。

「お客様の満足」では、幅広い層の人が、また訪れたくなる施設づくりを目指している。「ママ with ららぽーと」は子育て中のファミリーでも気兼ねなく買い物ができることを目指した取り組みであり、快適なベビー休憩室やプレイエリア、フードコートで安心して乳児と食事ができる小上がり席の設置等、さまざまな工夫を凝らしている。シニア向けサービスも昨今充実させてきており、ヨガや俳句体験等のイベントを実施している。また、「働く人の満足」という点では、従業員休憩室の充実に加え、従業員同士の触れ合いを図るスタッフパーティー等を実施している。

「社会への貢献」では、地球温暖化をテーマとしたイベントや、不要となった衣料品を回収し支援が必要な国へ送るプロジェクト等を定期的に開催している。

取り組みは高齢者・子ども向けが中心であり、課題も多いが、時間がたつにつれてよりよくなる「経年優化」の考え方のもとで街づくりを推進し、お客様や働く人、社会と共に、暮らしやすい社会の実現を目指して成長していきたい。

■ 花王「花王におけるユニバーサルデザインの取り組み」

花王では、これまで個別に行われていたユニバーサルデザインについて、商品開発に関わる部門横断で取り組めるよう、2010年に「ユニバーサルデザイン推進プロジェクト」を発足、有識者のインタビュー等のフィールドワークを踏まえ「人にやさしいモノづくり」等3本柱の指針を策定した。今日でも同指針に沿った取り組みを進めている。

「人にやさしいモノづくり」では、シャンプーとリンスを区別しやすくするために、1991年に初めて容器に刻みを入れた。あわせて消費者の混乱を防ぐため、実用新案を取り下げ、業界全体に統一を働きかけ、各社の賛同を得て今日に至る。

「『うれしい』をかたちにするモノづくり」では、毎日使うものだからこそ「うれしさ」や「感動」を創り出すことに努めている。色や柄のついた大人用紙パンツを提供し、シニアの気持ち、ニーズに寄り添っている。

「人や社会とつながるモノづくり」は、家庭や社会のなかで役割や居場所をつくり出すことに貢献している。クイックルワイパーは、お年寄りや子どもも手軽に掃除に参加することができるため、高齢のお客様からも「自分にも家族から喜ばれる役割ができた」との声をいただいた。

このほか、CMの字幕化や手話での相談窓口の設置等による情報のユニバーサルデザイン実現にも取り組んでいる。

【産業政策本部】