Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月15日 No.3385  製造業におけるデジタルイノベーション推進について聞く -産業競争力強化委員会

経団連の産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)は10月26日、東京・大手町の経団連会館で経済産業省との検討会を開催した。「製造業におけるデジタルイノベーションの推進」をテーマに、経済産業省の井上宏司製造産業局長とファナックの齊藤裕副社長執行役員から説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 井上局長説明

  1. 環境変化に対応したわが国製造業の方向性
    競争力の源泉がモノからサービス・ソリューションへ移行し、人手不足も深刻化している。そうしたなか、新たな環境変化に対応した付加価値獲得のため、Connected Industriesを推進していく必要がある。あわせて、現場力の維持・強化に資するデジタル人材の育成・強化を通じた現場力の再構築や、品質保証体制の強化も重要である。

  2. Society 5.0につながるConnected Industries
    Connected Industriesは、さまざまな業種、企業、人、データ、機械などがつながり、新たな付加価値創出や生産性向上、人手不足や環境・エネルギー制約などの社会的課題の解決を目指すもの。これらを通じて、産業競争力の強化、国民経済の健全な発展を実現していく。
    経産省は、「ものづくり・ロボティクス」など5つの重点分野を掲げている。各分野における「協調領域の最大化」「人材育成・研究開発」「中小企業支援」などに関し、規制・ルールの見直し等を含め、官民で検討を進めているところである。

■ 齊藤副社長説明

  1. パラダイムシフトへの対応
    ここ十数年で、製造業を取り巻く環境は破壊的速度・規模で変化している。IT技術の現場への適用が進み、従来のビジネスの境界線が消滅し、新たなビジネスや知の創造が可能となった。データを武器とするGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)等のプラットフォーマーが、ビジネス生態系に大きな影響を与える一方、日本のSociety 5.0やドイツのIndustrie 4.0など、国家レベルのデジタルトランスフォーメーションも加速している。
    そうしたなか、製造業が提供する価値がモノからコトに移行し、テクノロジーとデータを組み合わせたデジタルイノベーションが進行している。そこでは、物理空間とサイバー空間を接続するデータ資産が重要になる。また、機械学習によるアルゴリズム変革やAIを活用したシステムアーキテクチャの導入、プロセスの全体最適化も実現する。

  2. 日本型のゲームチェンジに向けて
    日本の製造業の強さの源泉は、ボトムアップに三現主義を加えた革新力と、現場を熟知したエンジニアである。日本の課題は、これを最大限に活かし、総合力を生むことである。そのためには、戦略シナリオを立案して取り組まなければならず、企業・産業ごとに持つ強みを産業横断的に活用し、全体最適を図るアプローチが重要になる。人を核としてデジタルと現場を掛け合わせた総合知を循環させ、モノとコトの両世界を連携して日本独自の協創型エコシステムを実現しなければならない。
    経団連には、Society 5.0の活動を通じ、業界を超えたビジネスの再構築・変革を推進するとともに、One Japanの体制で昨今のデジタル化やその活用に向けたある種の閉塞感を打破する役割を期待したい。

【産業政策本部】