Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月15日 No.3385  中間選挙結果~上下院間の際立つ対照 -ワシントン・リポート<50>

11月6日に実施された米中間選挙の結果は、上院は共和党維持、下院は民主党が奪還という痛み分けながら、それぞれ最低限の目標は達成できたといえる。しかし、民主党は夏までは上院も奪還できるとの希望を持っており、共和党は「カバノー効果」が下院でもはたらくとの希望を持っていたため、双方とも落胆する部分もあった。ただ、通例では大統領与党が中間選挙で下院議席を失うことの方が多く、上院の改選議席は圧倒的に共和党に有利な地盤だったことを考えると、想定内の結果に落ち着いたといえる。

■ 上院

上院は、27日に決選投票を行うミシシッピ州を除き結果が出ており、共和党の過半数維持は確定している。ミシシッピ州は共和党地盤であるので、最終的には議席を53まで伸ばす公算が大きい。現在のところ共和党が議席を失ったのはネバダ州とアリゾナ州であるが、民主党議員の敗北はフロリダ(僅差のため再集計中)、インディアナ、ミズーリ、ノースダコタの4州に上った。このうち特にフロリダ以外の3州は、2016年にトランプ大統領を大差で支持した州だが、現職民主党議員は10月初旬のカバノー最高裁判事承認に反対票を投じていた。モンタナ州のテスター議員が辛うじて生き残ったものの、これらの州が10月以降に共和党優勢に振れたことをみると、上院における「カバノー効果」は大きかったといえる。

一方で、16年のトランプ勝利のきっかけは、ラストベルト諸州の労働者階級の支持獲得により、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの3州を僅差で奪取したことだったが、この3州の民主党現職上院議員はそろって再選を果たした。ラストベルト諸州は前回のトランプ支持で固まったわけではなく、その限界が示されたといえる。ただ、トランプ大統領の応援集会は、接戦州の共和党議員の勝利に大きく貢献したとされ、彼らはトランプ大統領に恩義を感じている。反トランプだったフレイク議員やコーカー議員も去り、来年の上院共和党と大統領の距離は近くなるであろう。

■ 下院

下院では、民主党が23議席増やせば過半数獲得という状況であったが、現在までにすでにプラス30議席となっており、8年ぶりに民主党過半数となった。残り9議席がまだ当確待ちだが、プラス35議席以上まで伸ばす公算が大きい。これはすべてをのみ込むBlue Waveというレベルには至らなかったが、迎え撃つRed Wallを超えるには十分だった。

共和党は高所得の都市近郊クリントン支持区で壊滅的打撃を受けたが、そのさらに郊外の中流区で16年にトランプ支持幅が一桁の選挙区でも民主党が躍進した。他方、大統領選におけるトランプ支持が55%を超えた選挙区では共和党が守り抜いた。

その他、元は共和党支持であった近郊在住の富裕層女性票のトランプ嫌いによる共和党離れは止まらず、今回の選挙の接戦区はこの層がカギを握る所が多かったことが民主党勝利の背景にある。また、民主党の奪取議席の半分以上は女性候補であり、トランプ共和党にとって女性の支持回復が大きな課題となる。

■ 大統領の戦略

同じ中間選挙でも、共和党は上院と下院ではまるで違う戦いであった。上院では共和党州はより共和党色を強める必要があり、選挙終盤にトランプ大統領は中南米からのキャラバンなど不法移民問題を大きく取り上げた。一方、下院の都市近郊区を守りたいライアン議長は大統領が経済についてアピールするよう懇願したものの、上院と下院のどちらかしか守れないなら判事や閣僚承認の人事権を有する上院を優先するかのようにトランプ大統領は共和党ベース支持者鼓舞に舵を切ったと考えられる。

下院多数派となった民主党は、トランプ政権に対するさまざまな調査・監督権限を得て、弾劾も含めて揺さぶりをかけることが可能になった。しかし、立法については上院で共和党に阻まれることになり、政策的には大きな影響力は持てない。これまでの規制緩和や税制改革の取り組みが撤廃されることはない。むしろトランプ大統領は、優先課題を実現できないのは下院民主党の妨害のせいにし、20年は戦いやすくなる面もある。

【米国事務所】