Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月29日 No.3387  今後の研究開発のあり方について聞く -未来産業・技術委員会企画部会

経団連は11月2日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会企画部会(江村克己部会長)を開催した。文部科学省の松尾泰樹科学技術・学術政策局長、内閣府の中川健朗大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)、経団連未来社会協創タスクフォースの北野宏明座長(ソニー・コンピュータサイエンス研究所社長)から、今後の政府研究開発や科学技術政策について説明を聞くとともに意見交換を行った。

松尾局長はまず「日本の研究論文は、量・質ともに世界シェアを落としている」「日本は新たな研究領域に挑戦できていない。材料などの伝統的分野で優位性を保っているが、それらを組み合わせた新分野が発展していない」といった現状の課題を指摘。そのうえで「研究力向上に向けて、文科省は主な事項として、(1)研究力向上加速プラン(2)大学改革(3)オープンイノベーションの促進(4)AI時代における人材育成・研究開発の推進――の4つに取り組んでいる。特に(1)については、10年後も見据え、若手研究者に対する科研費の重点化や、国際共同研究への支援の強化を図っている」と説明した。

続いて中川審議官は「第5期科学技術基本計画の策定の際、産業界と密接に連携し、その結果、Society 5.0という新たなコンセプトも生まれた」と振り返った。そのうえで、現状について「世界はものすごいスピードで変化しているが、政府も取り組みを加速させている。例えば、AI戦略実行会議を9月に立ち上げ、AIがあらゆる場面で活用可能になるよう、行政丸ごとの構造改革を目指した検討を進めている。検討にあたっては、各省の局長級と直接議論しているため、これまでにないスピード感で物事が決まっている」と説明し、「引き続き経済界と密接に連携し、スピーディーに取り組んでいきたい」と述べた。

北野座長は「未来社会協創タスクフォースで、『Society 5.0 ―ともに創造する未来―』の取りまとめを行った。同提言では、研究開発の方向性を、『選択』と『集中』から、『戦略』と『創発』へシフトさせるべきだと打ち出している。特に『創発』については、ノーベル賞を受賞した本庶佑先生のように、ほとんど注目されなかった研究が革新的な発見につながることがあるため、極めて重要だ」と説明した。また、「今後、ロボティクス等を通じ、AI等のデジタル技術を実世界にフィードバックさせる製品・サービスの開発がますます進展する。そこにはまだ、デジタル革新に乗り遅れた日本企業も強みを発揮できる余地がある」と指摘する一方「AIやデータサイエンスと、事業領域の専門知識の両方を有する人材が不可欠であり、幅広い人材に、そのような能力を身につけさせる教育が必須だ」「高度人材には、生涯年収換算で8億~20億円という高額な報酬を提示するなどしてでも、そうした人材を育成・確保しなければならない」と主張した。

【産業技術本部】