Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月10日 No.3391  ミルズBIAC新事務局長との懇談会を開催

ミルズ事務局長

経団連では、今年6月のG20大阪サミットに先立ち、3月にB20東京サミットを主催する。B20として共同提言を取りまとめ、G20に働きかけていく活動の一環として、OECD(経済協力開発機構)に対する民間経済界の諮問機関であるBIAC(Business at OECD)とも連携を強化している。

こうしたなか、9月に就任したラッセル・ミルズBIAC事務局長が来日した機会をとらえ、経団連のOECD諮問委員会(櫻田謙悟委員長)は12月10日、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。ミルズ事務局長からBIACの活動方針等について説明を聞いた後、BIACのさまざまな政策委員会に日本代表として参画している委員を交え、パネルディスカッションを行った。会合の概要は次のとおり。

■ ミルズBIAC事務局長説明要旨

OECDは税制やデジタル、市場の開放性、鉄鋼の過剰生産問題、責任ある企業行動、ヘルスケア、コーポレート・ガバナンス等の政策分野でG20・G7の議論に大きく寄与している。企業活動に大きな影響を及ぼすこれらの分野におけるOECDの影響力が増すなか、BIACでは、経済界がOECDの議論にアクセスする機会を提供している。OECDに政策提言を行ううえで優先度が高いのは、(1)税制・BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト(2)デジタル化・Industrie 4.0(3)仕事の未来・スキル教育(4)ヘルスケア(5)マクロ経済分析と政策(6)競争(7)国際貿易投資(8)環境(9)責任ある企業行動――等である。日本代表委員はじめ、BIACの政策委員会に参画する各国の専門家の知見がOECDに物申すBIACの政策提言を支えている。

メディアによって政策が左右される傾向がますます顕著となるなか、事実やデータに基づく客観的な政策立案機能をあらためて強化する必要がある。そのためには、経済界としても効果的なメッセージを発信し、社会の広範な理解を得ることが重要である。日本が目指しているSociety 5.0についても、幅広い理解を得られるかが成否を左右するのではないか。

パリに本部が置かれていることも影響してか、OECDはEU諸国の意向に左右されるきらいがあり、アジア、特に日本のプレゼンスをBIAC・OECD双方で強化していくことが肝要である。日本がBIACの議論に一層関与していくことを期待する一方、日本政府と経団連が2019年G20・B20おのおののサミットの議長を務める機会も最大限活用し、政策要望の実現を図りたい。

■ BIAC日本代表委員によるパネルディスカッション

マクロ経済政策から税制、貿易・投資、デジタル経済、イノベーション、化学物質に至るまで、BIACの各委員会に携わる日本代表委員がパネリストとして参加し、デジタル変革や国内外の格差拡大を背景とする反グローバリズムの高まりといった世界経済を取り巻く環境の変化を踏まえ、活発な議論を行った。

法・規制の制度化が早い国々への対応などさまざまな課題が紹介される一方で、価値観を共有できる有志国官民とのルール形成を優先して進めることが効果的といった意見もみられた。一連の意見交換を踏まえ、ミルズ事務局長から、「ルール形成では、トップダウン型とボトムアップ型のアプローチをバランスさせる必要がある。政治的な問題を扱う時ほど経済界の意見の積み上げが不可欠だ」との総括コメントがあった。

【国際経済本部】