Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月24日 No.3393  熊谷千葉市長から国家戦略特区や行政改革の取り組みを聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会

経団連は12月18日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催。千葉市の熊谷俊人市長から同市における規制改革の推進をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 千葉市の現状

千葉市は首都圏の政令市のなかでは、市内在勤者の割合や昼夜間人口比率等が高く、圏域の中心都市・拠点都市としての性格を有している。市政運営においては、圏域経済の牽引役として、周辺市と率先して連携し、広域での経済社会の発展に注力している。

■ 国家戦略特区の取り組み

未来型の国際都市と位置づける幕張新都心を中核に、国家戦略特区を活用した近未来技術の実証実験等を重ねている。住民も最先端のライフスタイルを意識しており、この街で全国に先駆けた取り組みを行うことが千葉市の使命と考えている。

特に注目されているのが「ドローンによる宅配等の取り組み」である。直近では、地上配送ロボットとの組み合わせでマンションの個宅まで荷物を届ける実証実験を行った。

ドローンを活用した宅配に適しているものの1つに医薬品があり、「都市部におけるオンライン服薬指導の実施」が前提となる。現行制度は離島・へき地を想定しており、都市部(千葉市)での実施は困難である。しかし、共働きや高齢者人口の増加等を背景に、都市部にも診療から服薬指導、薬の授受までを在宅で可能とする「一気通貫」のオンライン医療へのニーズが存在することから、2018年5月の区域会議で新規の規制改革事項として提案した。

拠点間の移動負担を軽減し、「回遊性」を向上させる観点から、自動運転車やパーソナルモビリティーの実証実験も重ねている。実用化に向けては、複数車両の走行や定時運行に対応した運行管理システムの構築、安定的な通信環境の整備、関係法令上の取り扱いの明確化等が必要となる。

国家戦略特区の課題として、「レギュラトリー・サンドボックス制度」の創設が挙げられる。都市部でのドローンによる「目視外」「第三者上空」「補助者なし」の飛行は、実証実験でも認められないため、特区法の改正案を早期に成立させ、円滑に実証できる環境を整備すべきである。

また、ゼロリスク信仰からの脱却も重要だ。自動運転など新しい技術のリスクを数値化し、既存の手段と比べながら合理的に議論をすることで、社会的に受容していくべきだ。

さらに、都市部における実証の推進も欠かせない。リスクを取れる自治体が採算の見込める都市部において、民間主体の取り組みを支援し、全国展開につなげる必要がある。

■ 行政改革等の取り組み

行政のコスト削減だけでなく、「時間を返す」市民サービスの実現にも取り組んでいる。行政手続きの時間は生産的でなく市民の時間を奪っていると自覚し、約3000種類の行政手続きのうち、2000以上で原則押印を不要とした。また、区役所窓口のワンストップ化とバックヤード業務の集約化も実現した。

市民全員参加のまちづくりも進めている。市民協働プラットフォーム「ちばレポ」では、道路の傷みなど地域の課題を市民がスマートフォン等のICT機器を使って市にリポートし、行政の対応を促すとともに可能なものは市民の力で解決する。

こうした取り組みを全国に普及させるためには、国の補助金を前提としたスキームではなく、補助金に頼らずに各自治体が構築した優秀なコンテンツを国が評価し、買い上げて全国に展開する仕組みを提案したい。

国の関与という面では、自治体間の業務プロセスや様式の標準化を推し進め、法改正に伴い全国規模でシステム改修が発生する現状を改める必要がある。

【産業政策本部】