Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月21日 No.3397  ダイバーシティ・マネジメントセミナーを大阪で開催

経団連は2月1日、大阪市内で内閣府との共催により「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。2013年度から開始した同セミナーは、今年度で6年目を迎え、企業の役員・管理職やダイバーシティ推進の担当者など約200名が参加した。第1部では、日経BP社日経BP総研フェローの麓幸子氏が「ダイバーシティ時代のキャリア形成」をテーマに基調講演を行った。第2部では、ダイバーシティの先進的な取り組みを進める企業として、大和ハウス工業の北村安彦氏、リゾートトラストの吉田幸代氏、堀場製作所の森口真希氏から各社独自のダイバーシティ推進の事例や、キャリア形成支援に向けた取り組み等について事例紹介を行った。麓氏による講演の概要は次のとおり。

■ 基調講演「ダイバーシティ時代のキャリア形成」

麓氏

現代は、「VUCA」の時代と称される。これは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をつなげた言葉であり、予測不能な時代といわれる。VUCAの時代においては、かつて求められていた「課題解決型の人材」ではなく、「新たな価値を創出するイノベーション人材」が必要とされる。

日本においては人口減少が課題であり、生産年齢人口が減少するなか、企業は性差を問わず優秀な人材を確保する必要がある。「男性は仕事、女性は家庭」というかつての経済成長期のモデルとは異なり、時間に制約がある共働きの社員が「新しいマジョリティ」であることを念頭においたマネジメントが企業に求められている。そのためには、「ダイバーシティ&インクルージョン」が不可欠である。ダイバーシティ&インクルージョンを推進することにより、優秀な人材の確保や多様な市場ニーズへの対応が可能となる。さらに、男性中心のボードメンバーに女性が交ざることにより、リスク管理能力や変化に対する適応能力が向上するといわれており、これにより企業に新たなイノベーションをもたらすことが期待できる。

このようなダイバーシティ&インクルージョンの時代にキャリアを形成するには、ワーク・ライフ・バランスが非常に重要であるが、日本の企業は働き方改革が遅れている。「新しいマジョリティ」が台頭している現代において、ワーク・ライフ・バランスが整っていない環境ではワーク・ライフ・コンフリクト(葛藤)が生じ、従業員のモチベーション低下を引き起こす。企業は長時間労働等の働く環境を是正する「働きやすさ」の追求だけでなく、従業員のエンゲージメントを高める「働きがい」の向上という2軸で「働き方改革」をとらえ、推進していく必要がある。

ダイバーシティ&インクルージョンはすべての企業が目指す目標であるが、その第1段階として重要なのは、組織にいるすべての人が健康で心理的葛藤がなく、いきいきと働けるワーク・ライフ・バランスの実現である。第2段階として、会社のミッションが明確に示され皆が共感でき、自分が経営に関わっているという当事者意識の醸成が重要である。企業においては、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを生み出し、新たな価値創造につなげていただきたい。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】