Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月28日 No.3398  シェアリングエコノミーと規制のライフサイクルについて聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会

経団連は1月11日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催。中央大学法科大学院の安念潤司教授、東京大学大学院法学政治学研究科の田辺国昭教授から、シェアリングエコノミーと規制のライフサイクルについて講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ シェアリングエコノミー推進に向けた規制改革のあり方(安念氏)

情報通信技術の普及を背景に、個人等が保有する遊休資産をインターネット上のマッチングプラットフォームを介して他者が利用できる「シェアリングエコノミー」と呼ばれる経済活動が登場している。わが国においても、モノや場所のみならず、スキル等に関するものまでさまざまなプラットフォーム事業者が存在する。

シェアリングエコノミーの普及にあたり、業法に基づく規制が障害となる場合がある。その典型例が「民泊」である。個人等が住宅を宿泊目的に提供することをビジネスとして行う場合には旅館業法上の「簡易宿所営業」に該当し、延床面積要件や玄関帳場の設置義務等を満たす必要があった。これらの制約の大部分は2016年4月の規制緩和により取り除かれたが、依然として「旅館」とみなされるため、都市計画法に基づく用途制限が壁となり、住居専用地域での民泊は非常に困難であった。

昨年6月に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)では、この点が改善され、営業日数を年間180日以内に制限する等の条件のもと、住宅地での民泊が認められるようになった。ただし、同法は地方公共団体の条例による追加規制を認めているため、一部の自治体は大幅な上乗せ規制を行い、民泊を制限している状況がある。

シェアリングエコノミーは、(1)他人への低信頼性(2)代替サービスの存在(3)規制改革に要する時間コストの大きさ――を背景に、わが国では期待されたほど成長していない。とはいえ、後発組として他国や他企業の失敗に学べるアドバンテージがあるほか、資源を再度有効に活用すること自体はさまざまなかたちで進んでおり、嘆く必要はない。今後は、プラットフォーム事業者による独占への対処が課題となろう。

■ 規制のライフサイクルを踏まえた改革の推進(田辺氏)

政治学における「規制のライフサイクル論」は、規制当局と規制対象の関係の変化に着目しながら、規制を4段階に分類している。具体的には、社会の要請に応じて規制を導入する「誕生期」、当局が規制内容を拡大して対象と時に対立する「成長期」、当局と対象の関係が緊密化しながら規制を安定的に運用する「成熟期」、規制の実質的な機能が喪失して改廃に向かう「老年期」である。

ライフサイクルの合理性を判断するためには、規制の導入前の想定との比較が求められる。そこで、社会経済に与える費用と効果を踏まえて規制案を採択する「規制影響評価」が重要となる。わが国では、総務省の「規制の政策評価制度」の枠組みで07年から実践されている。同制度により、(1)規制導入の合理性(2)費用の見える化(3)一定期間後の検証(4)事後評価に基づく見直し――が期待されているが、現時点では、費用や効果の定量化が十分でなく、規制の検討段階等での活用も乏しい状況にある。

規制影響評価には、(1)証拠に基づく政策形成(EBPM)の実践(2)政府として蓄積・学習すべき情報に関するフレームワークの提供(3)適切な規制のデザインに向けたスマートな政策手段の構築――という効果があり、今後のさらなる推進が期待される。

【産業政策本部】