Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年3月7日 No.3399  CASEの潮流にみるスマートモビリティ社会の展望について聞く -産業競争力強化委員会

経団連の産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)は2月14日、東京・大手町の経団連会館で経済産業省との検討会を開催した。「スマートモビリティ」をテーマに、同省の井上宏司製造産業局長とトヨタ自動車コネクティッドカンパニーの山本圭司エグゼクティブバイスプレジデント(EVP)から説明を聞き意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 井上局長説明

いわゆるCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)の潮流は、社会的課題の解決につながる好機である。急速に進展するAIやIoTの技術を活用し、車を起点とするモビリティの大変革を見通せるようになった。経産省においても「自動車新時代戦略会議」などを通じて多様な側面から課題を整理し、議論を深めている。

一方で、CASEは既存の自動車産業にとって大きなチャレンジともいえる。今後のコネクティッド化、電動化、自動化、サービス化の進捗ペースは不透明で収益化には時間を要するが、国際競争を勝ち抜くためには中長期の投資継続が不可欠である。

電動化に向けては、車載バッテリーの性能向上や価格低減に取り組む。温室効果ガスの削減という意味では、石油採掘・発電から走行時までの環境負荷を総合的に評価する「Well to Wheel」の考え方が重要であり、これを世界に発信。あわせて、使用済み電池のリユースやリサイクル、コバルトなどの希少資源の確保も重要である。政府としては、ハイブリッド自動車も含めてxEV(電動車)(注)ととらえ、技術面のオープンイノベーションと国際協調を推進していきたい。

自動運転の実用化に向けては、技術面・制度面の課題解決と社会受容性の醸成を、並行して進めていく必要がある。政府では、検討会を立ち上げ、社会実装のための法制度整備や実証実験プロジェクトに取り組んでいる。

自動走行社会の実現に向けては、MaaS(Mobility as a Service)市場の活性化も重要になる。単なる技術開発を超えて、買い物、医療、観光、物流など地域全体の経済活動との連携により、収益性を追求していかなければならない。Society 5.0の実現に向け、官民連携のもとで対応していく。

■ 山本EVP説明

CASEの時代を迎え、自動車業界は現在、100年に一度の大変革に直面している。象徴的なMaaSの進展は、全世界で同時多発的に起きており、地域や市場ニーズに応じて柔軟にビジネスモデルが変化する点で脅威である。また、こうした変化はOEM事業者のMaaSへの経営シフトや第三者へのビジネスの流出など、従来のバリューチェーンにも大きな影響を与えており、自動車メーカーは危機感を抱いている。

こうしたなか、当社は単なるものづくり企業ではなく、すべての人に移動の自由を提供するモビリティカンパニーになると宣言した。具体的には、制御インターフェースやAPIをオープン化し、多彩な用途への対応を可能にしたMaaS専用の次世代モビリティ車両「e-Palette」の開発である。また、モビリティサービスプラットフォームを整備し、人流や車両情報等のビッグデータの活用を図る。これにより、新しいサービスの創造や提供、設計支援や品質支援、バリューチェーンの拡大に取り組む。さらに、大量のデータを処理するモバイルエッジコンピューティングのような、先進情報インフラの構築等を推進し、ジャストインタイムのモビリティサービスを追求する。

自動車会社に対する社会的要請は、単純な製造にとどまらず、社会そのものにいかに貢献するかという側面が色濃くなってきている。MaaSを核とする街や社会システムのあり方について、多様なパートナーと共に考え、その実現に向けて、今後も使命を全うしていきたい。

(注)xEV=電気自動車(BEV)、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCEV)の総称

【産業政策本部】