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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年3月28日 No.3402 「世界経済情勢と日本~東京五輪後を見据えて」 -経団連昼食講演会シリーズ<第38回>/慶應義塾大学の白井教授が講演

白井教授

経団連事業サービス(中西宏明会長)は2月27日、東京・大手町の経団連会館で第38回経団連昼食講演会を開催し、慶應義塾大学総合政策学部教授の白井さゆり氏から講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 2018年の世界経済情勢

2018年の世界の経済情勢を振り返ると3つの特徴がある。1点目は、日本、中国、その他アジア諸国、欧州諸国とも、米国以外は景気が減速したことである。特に製造業において年末からはっきりと減速感が見られた。2点目は、米国経済は総じて堅調だったことである。製造業も非製造業も好調で、これは大規模減税と歳出拡大によるところが大きい。つまり、米国経済そのものが強かったというよりも、政府の財政政策によって景気が支えられていたといえる。3点目は、株価、金利、為替および原油等のコモディティーの価格が乱高下を繰り返し、非常に不安定な金融市場となったことである。とりわけ年初の2月と、年末の12月の動きは激しいものがあった。

■ 19年の日本経済に影響を与える対外要因

すでに19年も3月に入ろうとしているが、今年の日本経済に影響を与えると思われる対外的な要因を3点挙げたい。第1に、米国の金融政策である。米国連邦準備制度理事会(FRB)が今年になって政策スタンスを「緩和的」な方向に転換したことなどにより、米国の株価は上昇した。米国において消費が堅調さを継続し、また良好な企業収益が続けば、株高は維持され、日本の株価に対しても追い風となる。一方、ドルは世界および米国の景気に懸念が生じれば、ドル安に転じる可能性がある。その分、安全通貨である円は円高に振れる。このため、日本の株価は、米国の株価の上昇圧力と円高による下落圧力によって変動しやすくなる。第2に、日米貿易交渉である。近々、交渉が行われる見込みであり、そのなかで「政府は外国為替市場に介入しない」という「為替条項」が俎上に載ることが予想される。従来、急激な円高が進んでいるときには、日本銀行、金融庁、財務省の3者が会談を行い、必要があれば市場介入するとの意思を示し、円高にブレーキをかけてきた。為替条項の遵守を強いられれば、これまでの対策が講じられない。介入に代わる手段を考える必要がある。第3は、中国の景気動向である。すでに中国の景気は減速している。その背景には、膨張したシャドーバンクに対する抑制政策が景気に水を差したことがある。そのような中国の状況によって、日本からの輸出にも影響が出てきている。

■ 中長期的な日本経済の見通し

中長期的に日本経済を占ううえでのポイントは、急激に進む少子高齢化に伴う労働力人口の減少と、産業構造のサービス化による生産性低下の懸念である。高齢化による医療・福祉などへの需要の高まりも一因となって、製造業と比べて相対的に生産性が低い非製造業中心の産業構造となりつつある。このことが日本全体の生産性を低下させる方向に働く懸念がある。したがって、日本経済の成長率はゆるやかに鈍化していくと見込まれる。人手不足で賃金や物流費は上昇するが、消費者には物価高感があり、販売価格への転嫁は容易ではない。このため、非製造業を中心に、いかに生産性を向上させていくかが喫緊の課題となる。その渦中で企業間の淘汰・再編が相当な勢いで進むと予想している。

【経団連事業サービス】

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