Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年4月4日 No.3403  駐欧州大使との懇談会を開催 -激動の欧州情勢等について聞く

あいさつする中西会長

経団連は3月13日、東京・大手町の経団連会館で、中西宏明会長、古賀信行審議員会議長、飯島彰己・山西健一郎副会長、佐藤康博・遠藤信博・畑中好彦審議員会副議長、佐藤義雄ヨーロッパ地域委員長、加藤泰彦資源・エネルギー対策委員長らが出席し、欧州に駐在する日本国大使との懇談会を開催した。中西会長の冒頭あいさつの後、5名の大使から現地情勢等について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 兒玉和夫EU代表部大使

最終年を迎えたユンカー欧州委員会委員長・トゥスク欧州理事会議長体制は、数々の危機にさらされながらも、EUの一体性と結束をなんとか維持してきた。そのなかにあって、ユンカー委員長いわく、日本との経済連携協定は最大の成果・レガシーの1つ。Brexitについては、離脱期限を3月29日から延長したとしてもどのような合意ができるか不明であり、「合意なき離脱」の可能性も否定できない。英国なきEU27では独仏主導が強まることは必至である。

■ 鶴岡公二駐英国大使

日英関係は在英日系企業の活動を基礎として非常に良好であり、安倍政権のもとで安全保障・防衛も含むより包括的な関係を目指している。Brexitについては、欧州理事会を経て3月29日が近づいたところでEUとの合意案が可決され、実施法制定のために若干の期限延長を行う可能性がある。「合意なき離脱」を回避し、将来の関係を共同で構築していこうという点で、いちど英国とEUが一致すれば、状況は一変することもあり得る。

■ 木寺昌人駐フランス大使

「黄色いベスト」運動が大きく報道されているが、同運動への国民の支持は大幅に低下している。大統領の権限は強く、マクロン政権は盤石である。皇太子殿下のフランスご訪問、約300万人が参加した日本文化行事「ジャポニスム2018」によって親日感が醸成され、日系企業の活動を基礎に置く日仏関係は新たな段階に入りつつある。「グローバル化のなかでも発展するフランス」を目標に掲げるマクロン政権のもと、今後も改革が継続される見込みである。

■ 八木毅駐ドイツ大使

昨秋の州議会選挙においてキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社民党(SPD)が大きく後退し、メルケル首相がCDU党首選に不出馬、親メルケル派のクランプ=カレンバウアー幹事長が党首選に勝利した。こうしたなか、メルケル首相がいつまで首相にとどまるか、後任は誰かが内政の焦点であり、5月の欧州議会選挙、秋の旧東独3州の議会選挙の結果が注目される。

■ 上月豊久駐ロシア大使

欧米による制裁で資本流出が増加、実質所得が5年連続減少しており、国民の不満が蓄積している。大統領支持率は67%(2018年7月)に急落、信頼する政治家としてプーチン大統領を挙げる回答も33.5%(19年2月)と調査以来最低水準にある。こうしたなかで世論を意識したポピュリズム的対応がみられるようになっている。日露関係については、領土問題への国内世論は日本に厳しい一方、年次教書のなかで初めて日本との経済協力と平和条約締結に言及するなど、ロシア経済が厳しいなか日本の協力を必要としている。

【国際経済本部】