Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年4月25日 No.3406  グリアOECD事務総長と懇談 -OECD諮問委員会を開催

グリア事務総長(中央)と中西会長(右)、櫻田委員長(左)

経団連の中西宏明会長は4月15日、東京・大手町の経団連会館で、来日したアンヘル・グリア経済協力開発機構(OECD)事務総長と面会し、日本経済が直面する課題やその打開策等について意見を交わした。

それに先立ち、経団連のOECD諮問委員会(櫻田謙悟委員長)では同事務総長との懇談会を開催し、わが国経済の現状に関するOECDとしての分析結果や、6月末のG20大阪サミットに向けたOECDの取り組みなどについて説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ グリア事務総長説明要旨

説明するグリア事務総長

OECDでは、2019~20年の間の世界経済の成長率見通しを、昨年時点の約4%から約3.3%へと下方修正した。保護主義的な政策や不確実性は、貿易のみならず投資にも負の影響をもたらしている。日本も例外ではなく、企業の景況感は低水準にあり、経済成長も鈍化する見込みである。

こうしたなか日本政府は、法人税減税や保育施設の拡充、新たな外国人材の受け入れなど、重要な施策に着手している。また、昨年末の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)や今年2月の日EU経済連携協定(EPA)が発効したことにもみられるとおり、日本は自由貿易の旗手としての役割を果たしている。

その一方で、日本の生産性はOECD加盟国の上位半数と比べて4分の1以上、下回っているばかりか、大企業と中小企業との生産性の格差も広がってきている。コーポレートガバナンスの向上等を通じて、企業部門の活力を高め、生産性格差を是正しなければならない。

OECD加盟国で最高水準の人口高齢化と政府債務は、日本が直面する「双子の課題」である。

こうしたなかOECDでは、日本が議長を務めるG20大阪サミットに向けて、質の高いインフラ、高齢化社会、デジタル経済、気候変動、女性のエンパワーメント、Society 5.0を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の達成、といったテーマに技術的・専門的な観点から協力している。このほかにも、国際課税、鉄鋼の過剰生産能力、AI、データガバナンス等の問題に取り組んでいる。

3月に行われたB20東京サミットの共同提言の内容は、OECDの優先課題と軌を一にするものである。今後の政策は、人々の生活を向上させ、SDGsの達成に寄与する観点から、包摂性と持続可能性を中心に据える必要がある。この点、5月下旬にはOECD、B20東京サミット(経団連)、BIAC(OECDに対する民間経済界の諮問機関)の三者で、B20に関する特別セッションを企画しているので、議論を深めることを楽しみにしている。

■ 意見交換

参加者からは、デジタル革新ほかさまざまな政策課題に対するOECDの政策提言能力に期待が示された。このほか、「OECDには、複数国間で開かれた枠組みであるという利点を活かし、グローバルなルールづくりを進めてほしい」「OECD非加盟国も巻き込んだ議論を展開することに期待する」といったコメントがあり、グリア事務総長から、経団連の意見も踏まえ、今後とも連携していくとの決意が表明された。

【国際経済本部】