Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年5月16日 No.3407  「海事分野におけるSOx規制導入を考えるシンポジウム」を開催

経団連は4月23日、東京・大手町の経団連会館で国土交通省、日本船主協会(船主協会)、日本内航海運組合総連合会(内航総連)、日本旅客船協会(旅客船協会)と共同で「海事分野におけるSOx規制導入を考えるシンポジウム」を開催した。荷主企業、物流事業者などから約300名が参加した。

国際海事機関(IMO)における2008年の海洋汚染防止条約改正に基づき、20年1月から、舶用燃料油中の硫黄分濃度規制が3.5%以下から0.5%以下へと強化される。これまでも海運業界においては、地球・海洋環境の保全と船舶の安定運航の両立に向けて、省エネルギー技術の導入などに取り組んできたが、今次規制強化に対応するためには、荷主を含め社会全体の理解と協力が求められている。概要は次のとおり。

あいさつする武藤委員長

開会あいさつで水嶋智国土交通省海事局長は、「SOx規制への当面の対応として、従来よりも価格の高い規制適合油の使用が求められるため、海運事業への大きな影響が懸念される。本日のシンポジウムが、大気環境の改善を通じて社会全体に貢献する今次規制について理解を深めていただく一つの契機になればと思う」と述べた。

続いて、武藤光一経団連運輸委員長・船主協会会長が登壇。「地球・海洋環境の保全は、経団連においても推進しているSDGs(持続可能な開発目標)の大きな柱。海運業界においてもこれまで、地球温暖化対策、海洋汚染防止策、生物多様性保全対策に積極的に取り組んできた。本日のシンポジウムでは、いろいろな立場の方々の対応方法について考える材料を提示できればと思う」と述べた。

■ 講演

前半の講演では、大坪新一郎国土交通省海事局次長が今次規制の概要および政府の対応について説明。「海運事業におけるコストに占める燃料費の割合は大きく、規制適合油の価格上昇が海運業に与える影響は大きい。一方、仮に燃料油価格の20%上昇分が内航運賃に転嫁されても最終製品に対するコスト増加率は0.03~0.12%であり、社会全体としてみたときの負担増による影響は限定的」と指摘した。

■ パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションでは、河野真理子早稲田大学法学学術院教授の進行のもと、武藤委員長、大坪次長を含む7名のパネリストがSOx規制に対応するうえでの課題等をめぐり議論した。

そのなかで、小比加恒久内航総連会長が「今次規制への対応としては低硫黄燃料油の使用、スクラバー(排気ガス洗浄装置)の設置、代替燃料(LNG等)の使用という3つの手段があるが、いずれにせよコスト増は避けられない」と説明。加藤琢二旅客船協会副会長も「09年以降、フェリー業界は航路の廃止・統合などあらゆる合理化を進めてきた。今後、老朽船の代替建造も進めなければならず、さらなる合理化の余地は限られている」と述べた。

続いて、木村晋日本政策投資銀行産業調査部次長は「長期的には、SOxのみならず、NOx・CO削減にも寄与するLNG燃料船への切り替えを進める必要があるが、コストの増加とバンカリング拠点整備が課題」と指摘。また、河野達也住友商事物流業務部長は「最終消費者の理解を得るためには、広告等を通じて広く周知を図る必要がある。サプライチェーンのなかで最も弱い人が負担するかたちになることを防ぐのが課題」と指摘した。二村真理子東京女子大学現代教養学部教授は「船会社にとっても荷主にとっても、サーチャージによる柔軟な対応がよい方法ではないか。最終的には薄く広くオールジャパンでの対応が必要」と述べた。

パネルディスカッション

【産業政策本部】