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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年6月13日 No.3411 2019年度総会・シンポジウムを開催 -経団連自然保護協議会・経団連自然保護基金

経団連自然保護協議会(二宮雅也会長)・経団連自然保護基金は5月22日、東京・大手町の経団連会館で2019年度総会およびシンポジウムを開催した。シンポジウムには協議会会員企業、基金への寄附者、NGOなど約170名が参加した。二宮会長の開会あいさつ、環境省の奥田直久大臣官房審議官の来賓あいさつの後、国立環境研究所の五箇公一生態リスク評価・対策研究室長による基調講演を行ったほか、19年度支援プロジェクトの紹介、25周年記念特別基金助成事業の実施団体によるプロジェクト進捗報告、先進的な取り組みを展開する企業、市民団体、地域を代表する3団体による事例紹介を行った。あいさつと基調講演の概要は次のとおり。

あいさつする二宮会長

■ 開会あいさつ

愛知目標の最終年まで残すところ1年となった。協議会では、NGOが行うプロジェクトへの支援等に加え、昨年度における「経団連生物多様性宣言」の改訂や「生物多様性の本箱」の寄贈活動など、生物多様性の主流化に積極的に取り組んでいる。昨年度のアンケート結果によると、生物多様性に関する行動指針等を作成している企業は09年度と比べて倍以上に増加するなど、日本経済界における生物多様性の主流化は大きく進展している。日本経済界の先進性については、昨年11月の生物多様性条約締結国会議(COP14)でも発信してきた。今後ともポスト愛知目標を見据えつつ、活動を展開していく。

■ 来賓あいさつ

経団連自然保護協議会は経済界における生物多様性の主流化に大きく貢献しており敬意を表する。愛知目標の最終年度を1年後に控え「ポスト2020年目標」の議論が国際的に進むなか、今月上旬、フランスで開催されたG7環境大臣会合では、原田義昭環境大臣をはじめ各国の指導者の意見を踏まえて「生物多様性憲章」が取りまとめられた。今後は生物多様性の保全と持続可能な利用における企業の役割の重要性はますます高まる。環境省としては引き続き、経団連自然保護協議会との緊密な連携を図っていきたい。また、国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)における「MY行動宣言」への引き続きの協力もお願いしたい。

講演する五箇室長

■ 基調講演「生物多様性と私たちの生活」(五箇氏)

生物多様性には遺伝子・種・生態系・景観と、ミクロからマクロまでの幅広い階層がある。例えば、遺伝子の多様性がない種や集団は環境変化が起きた際にはついていけず、滅びる確率が高い。人間集団も同じ顔や性格ではつまらない社会になる。生物多様性を保全することは、かわいい動物やきれいな植物を守るといった単なる「愛護」を意味するのではない。「安全・安心で豊かな人間社会を持続すること」である。

地域性や固有性・個性が生物多様性の持続性を支えている。しかし近年、熱帯林の破壊や野生生物の乱獲などによって、生物種の絶滅速度が桁違いに速くなった。また、グローバリゼーションによって侵略的外来生物の侵入が加速しているうえに、都市化やヒートアイランド現象により、生息適地が拡大している。セアカゴケグモが44都道府県で見つかるなど、身近な自然が侵略的外来生物に置換されている。その拡大範囲は予測困難である。

さらに、生物多様性の破壊は、SARSやHIVなどの新興感染症ウイルスの侵入拡大をもたらしている。具体的には、これまで野生動物と共生・共進化してきた病原体や寄生生物が、本来のすみかを奪われた結果、グローバル化の波に乗って都市に潜入し、野生動物に代わる新たな宿主として、人間をターゲットにしている。 病原体や寄生生物は、自然界では野生生物の個体群調節機能を果たすなど、生態系の安定化に不可欠の存在である。しかし人間は、病原体等と抗ウイルス薬等で戦っているものの、インフルエンザとの戦いはいまも続いている。

ブラジルでジカ熱ウイルスが大発生したが、2014年のワールドカップと16年のリオ五輪が契機となって広まったといえる。熱帯化している東京では、オリンピックが開催される20年が「ウイルス元年」となる可能性もある。ウイルスと戦い続けるという発想ではなく、「病原体も含む生物多様性との共生が私たちの生活の持続性にとってとても重要であること」を理解する必要がある。

◇◇◇

その後、企業とNGO等との交流会を開催し、環境省やNGO等による活動のパネル展示等を行った。120名を超える関係者が参加した。

【環境エネルギー本部】

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