Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年6月20日 No.3412  今後の社会保障制度改革に向けた財務省の考え方聞く -社会保障委員会医療・介護改革部会

経団連の社会保障委員会医療・介護改革部会(藤原弘之部会長)は5月23日、都内で財務省主計局の吉野維一郎主計官(厚生労働係第一担当)から、「持続可能な社会保障の構築に向けて」と題し、現在の社会保障をめぐる状況や、今後の社会保障改革に向けた同省の考え方について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 社会保障をめぐる状況

高齢化の進展に伴い、わが国の社会保障給付費は1990年の47.4兆円から、2018年には予算ベースで121.3兆円と、2.6倍に膨らんでいる。25年には団塊の世代がすべて75歳以上になり、40年には65歳以上人口がピークを迎える。40年まで持ちこたえれば大丈夫との声も聞かれるが、社会保障制度の「支え手」である20~74歳人口は、22年から25年にかけて年100万人規模で減少し、その後も中長期的に大幅な減少が続くため、経済成長の足かせになることが危惧される。

高齢化のスピードが速く、その分医療・介護にかかる公費負担も大きく伸びており、税収で賄えない分を国債発行で補っている。保険料についても同様に、医療・介護費用が急増するなか、負担は年々増加している。

■ 医療・介護分野において必要な制度改革

わが国の医療・介護制度の特徴として、(1)国民皆保険(2)フリーアクセス(3)自由開業制(4)出来高払い――の4点があり、患者側の負担は少なく、医療機関側は患者数や診療行為が増加するほど収入も増える。こうした供給サイドの要因は、医療・介護費の増大を招きやすい。これに加えて、医療の高度化・高額化が拍車をかける。

こうした状況に対し、改革の視点として重要なのは、(1)保険の給付範囲のあり方の見直し(2)保険給付の効率的な提供(3)高齢化・人口減少下での負担の公平化――の3点である。

(1)については、高額医薬品等の大きなリスクは保険給付(共助)とし、小さなリスクに対する保険給付のウエートを引き下げ、自己負担(自助)とする方向の見直しを行うことが望ましい。具体的には、医薬品の有用性に応じた保険給付率等の設定を提案している。また、医療機関を受診する際に、自己負担とは別に定額の負担を求める制度の導入等についても検討すべきである。

(2)については、他国と比して過剰な病床数について、機能分化を進めて適正化することや、各種インセンティブ施策を用いて国民健康保険の保険者機能を強化すること、さらには診療報酬の適正化等を通じて医療費の増加スピードを抑制することが必要になる。

(3)については、現役世代の負担が年々増加していくことを踏まえ、まずは、今後75歳以上になる方の自己負担を、原則1割から2割とする見直しを進めたい。

介護分野においても、中重度の要介護者への給付の重点化・効率化を進めるとともに、介護費の抑制や地域差縮減に向けた保険者の取り組みを促すことが必要になる。利用者負担についても、現在の原則1割から2割に引き上げていくべきである。

介護については一足早く制度改革の議論が始まっているが、医療についても、今夏以降、議論が本格化し、20年の骨太の方針において制度改革の方針が取りまとめられた後、21年から法案化され、その多くは22年以降実施に移されることを予定している。

【経済政策本部】