Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月29日 No.3420  米国における大規模自然災害 -ワシントン・リポート<63>

近年、米国では大規模な自然災害が多発している。とりわけ2018年秋には大型のハリケーンが米国南部に相次いで襲来し、大規模な被害が発生したことは記憶に新しい。

一般的に、広大な国土を有する米国では地域別に発生する災害の特徴が異なっている。すなわち、フロリダ州やルイジアナ州をはじめとする南東部へのハリケーンの襲来、マサチューセッツ州をはじめとする北東部における寒波の到来、カンザス州やオクラホマ州を中心とする中西部における竜巻の発生、そして、カリフォルニア州を中心とする西部での地震の発生や大規模な山火事の頻発などである。同時に、全米各地で集中豪雨を理由とする大規模な洪水も多発しており、今年の7月にはワシントンDCでも局地的な豪雨による冠水被害が発生した。

また、災害の規模も大きいことから、発生した場合の被害も甚大となる。米国海洋大気庁の試算によると、1980年以降の自然災害による被害総額は約1.6兆ドルにも上る。図表は近年の米国における大規模災害を取り上げたものであり、被災エリアが広範にわたるとともに、被害額が莫大であることが見て取れる。

米国の最近の大規模自然災害
種別(名称)被災エリア被害額
(億ドル)
2017年ハリケーン
(ハービー)
テキサス、テネシー、ルイジアナ1250
2017年ハリケーン
(イルマ)
フロリダ、ジョージア、サウスカロライナ500
2017年ハリケーン
(マリア)
プエルトリコ900
2018年山火事カリフォルニア
2018年ハリケーン
(フローレンス)
サウスカロライナ、ノースカロライナ
2018年ハリケーン
(マイケル)
フロリダ、アラバマ、ジョージア
※ 被害額は米国海洋大気庁の推計による(2018年は未公表)

今後も、地球規模の気候変動のなかで大規模な災害が米国を襲うことが想定されるが、米国議会予算局(CBO=Congressional Budget Office)は、災害対応への連邦政府の費用負担を削減するための方策を提案している。そのなかには、例えば、海水面の上昇を防止するための温室効果ガス排出の制限や洪水リスクのある地域の査定のための連邦予算の増加、連邦政府や州政府による災害予防に向けた予算の増額等が含まれている。

わが国でも、これまで多くの地震、台風や集中豪雨といった自然災害に見舞われており、災害大国として数多くのソフト・ハード両面における技術や知見を集積するとともに、防災・減災に向けた官民を挙げた取り組みを進めてきた。わが国が有するそれらの防災・減災に向けた技術・知見は、米国における防災・減災にも資するものであり、具体的に貢献できる余地が大きいと考えられる。

【米国事務所】