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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月5日 No.3421 第2次モディ政権の展望について聞く -南アジア地域委員会

経団連は8月22日、東京・大手町の経団連会館で南アジア地域委員会(冨田哲郎委員長、平野信行委員長)を開催し、外務省アジア大洋州局南部アジア部の滝崎成樹部長から、「第2次モディ政権の展望」について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 総選挙の結果とカシミール情勢

今年4~5月の下院総選挙において、モディ首相率いる与党インド人民党(BJP)は542議席中303議席を獲得し、前回の282議席を大きく上回って大勝した。選挙前にはモディ首相は苦戦を強いられるとの予想もあったが、テロをめぐり隣国への断固たる姿勢を示したことで、強いリーダーとしての評価が高まったことが大きな要因とされている。

選挙結果を受けてインド政府は8月、ジャンム・カシミール州の自治権を認める憲法370条の廃止を決定した。イスラム教徒が大半を占める同州では、同州がインドに統合されて以来自治権が認められていたが、BJPは同条の廃止を政権公約として掲げていた。今回の決定に対し、カシミール地方政党をはじめとする野党や国際社会から懸念の声が上がっている。

■ インドの外交政策~日印関係と印中関係

日本とインドは長きにわたり良好な関係を築き、最近では「日印ヴィジョン2025特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を策定し、広範な協力を推進している。この背景として、安倍首相とモディ首相の個人的信頼関係が挙げられる。また、インドは日本のODAの最大供与国であり、今後は日印二国間のみならず、スリランカやバングラデシュなど周辺地域を視野に入れた第三国協力を進めていくことも重要である。

対外関係について、インドは「アクト・イースト」を中心に積極外交を展開しているが、最大の貿易相手国でもある中国との関係が一つの軸となっている。国境紛争を抱え、常に警戒感を隠さない一方、モディ首相は状況に応じて柔軟に対応しており、例えば、一帯一路構想には慎重姿勢を取りつつも、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の最大の融資受け入れ国となっている。

■ 自由で開かれたインド太平洋戦略

インド太平洋戦略は、連結性の向上を通じ、地域全体の安定と繁栄を促進することを目的に日本が打ち出した構想であり、インド、米国、ASEANなどは重要なパートナーである。その実現に向けて、(1)法の支配、航行の自由(2)経済的繁栄の追求(3)平和と安定の確保――を三本柱に取り組んでいる。今年6月のASEAN首脳会議において、ASEAN版のインド太平洋構想である「ASEANインド太平洋アウトルック」が採択されるなど、関係国の理解も深まっており、賛同する国々と連携し推進していきたい。

■ RCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉

RCEPは、世界人口の半分、世界のGDPおよび貿易総額の約3割を占める広範な経済圏である。インドをはじめ主要国で選挙が予定されていたこともあり、昨年中の妥結には至らなかったが、昨年11月の共同首脳声明において、2019年内に妥結する決意を表明している。インドは対中国の貿易赤字のさらなる拡大を懸念している。また、人の移動等をめぐり交渉国の間で思惑の違いもある。わが国としてはインドとの意思疎通も密にしつつ、年内に妥結したいと考えている。

【国際協力本部】

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