Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月5日 No.3421  米国SECのピアース委員との意見交換会を開催 -金融・資本市場委員会

ピアース委員

経団連は8月6日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会(國部毅委員長、日比野隆司委員長、林田英治委員長)を開催し、米国証券取引委員会(SEC)のヘスター・ピアース委員との意見交換会(座長=日比野委員長)を行った。ピアース委員とは、金融・資本市場委員会が今年4月に派遣した「投資家との建設的な対話促進を目的とした訪米ミッション」(団長=國部委員長、日比野委員長)(4月25日号既報)においてワシントンDCのSEC本部で懇談していることから、今回の来日の機会をとらえ、日本経済界との意見交換について申し入れがあった。

冒頭、ピアース委員から米国やグローバルの金融市場における規制の潮流やSECの取り組みについて紹介があった。概要は次のとおり。

SECは今年、設立85周年を迎える。その時々の問題に対処するため、これまでさまざまな規制を導入してきたが、それらの規制はいま抱える課題に対して十分に対処しきれていないのが現状である。加えて世界は非常に複雑化してきており、企業は難しい問題を突きつけられている。SECの歴史のなかでも非常にユニークな時代を迎えており、設立当時とは違う状況のなかで規制を見直していかなければならない。

SECは、金融市場を取り巻くさまざまなルールが複雑になっており、意図しない結果を招いていると認識している。企業が市場で資金調達をするにあたってもコストが高くなってしまい、米国ではこの20年間で公開会社の数が減少している。株式公開に向けた不必要な障壁を取り払い、市場への参加をさらに促し、公開会社の数を増加に転じたいと考えている。また、重要な情報が投資家に届き、情報に裏打ちされた投資判断ができるようにする必要があるが、現在の開示規制はあまりに複雑であり、簡素化を目指している。加えて、株主総会や議決権行使プロセス全体の見直しのなかで、株主提案の要件引き上げ、人的資源の不足や利益相反が指摘される議決権行使助言会社について、透明性の向上のための規制などを検討している。

昨今、企業に対して「サステナビリティー」や「ESG」(環境・社会・ガバナンス)を求める圧力が高まっている。こうした概念の背景にある動機自体は理解できないものではない。しかしながら、非財務情報の開示には標準化された尺度が存在せず、指標として測定が難しい。にもかかわらず、企業がそうした目標に経営資源を割くことを強要されることで、長期的な価値の向上や株主の利害といった本質的な目的から遠のいてしまうことが懸念される。チェックリストなどの世界的なトレンドを受け入れるだけではなく、真に道義的・倫理的なコンパスに照らして、何が問題なのかを考えていくべきである。

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その後の意見交換では、米国において見直しの検討が進められている四半期開示制度、取締役会のダイバーシティや女性活躍における規制の考え方、さらにはSNSを活用した企業情報開示等について活発な意見交換がなされた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】