Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月19日 No.3423  「雇用保険制度見直しに関する提言」を公表 -健全な財政運営の確保と構造改革の推進を求める

経団連は9月17日、「雇用保険制度見直しに関する提言」を公表した。雇用保険制度をめぐっては、9月以降、労働政策審議会において法改正に向けた議論が行われる。そこで、経団連の考え方を取りまとめ、議論への反映を図ることとした。

■ 基本的視点

第一に、健全な財政運営の確保である。一定水準の積立金残高を保有し、国庫から一定額繰り入れることで、労使の協力のもと、保険料率を安定的に推移させながら、中期的に健全な雇用保険財政を確保することが求められる。

第二に、構造改革への適切な対応である。雇用保険が、多様な人材の活躍推進、働き手の職業能力の向上、労働市場の機能強化といった雇用政策とともに、雇用・労働分野の構造改革を後押しできるよう、必要な制度見直しを行うべきである。

■ 財政に関する考え方

失業等給付にかかる積立金残高は足元5兆円弱ある(図表参照)。ただし、今後、政府の骨太方針を踏まえ、保険料と国庫負担の時限的引き下げが2020年度以降も継続した場合、これが長引くほどより多く積立金が減少する。時限措置終了後の積立金水準次第では、保険料を急激に引き上げざるを得なくなる。したがって、保険料と国庫負担の時限的引き下げは、最長でも21年度までの2年間とすべきである。あわせて保険料については、料率が安定的に推移するよう、積立金の水準目安のあり方を見直す方向で検討すべきである。また、国庫負担は、国が主導する雇用政策の責任を明確化するものであり、国の責任は国家財政の状況や雇用保険の積立金の多寡で変わらない。国庫負担は、速やかに従来の暫定引き下げ措置(本則の額の55%)の水準まで戻すべきである。

図表「失業等給付積立金残高の推移」

■ 制度設計に関する考え方

高年齢雇用継続給付は、これまで60歳代前半層の継続雇用を後押ししてきた。しかし、企業における人事賃金制度見直しの動向や同一労働同一賃金に関する法改正への対応に鑑みると、今後、見直し議論は避けられない。仮に見直すとしても、受給者への十分な配慮、企業における制度見直しの動向をあわせて考え、十分な経過措置を講じるべきである。

70歳までの就業機会確保に向けては、企業における取り組みとともに、国・地方自治体・公的機関によるキャリア支援サービスやマッチング充実・強化等社会全体での環境整備が不可欠であり、雇用保険二事業の効果的な活用を期待する。

育児休業給付は、年々着実に増加し、求職者給付と同等の水準となっている。さらに制度拡充を求める声も強い。社会全体として子育てを支援するという考え方のもと、今後のあり方について、中長期的な視点から、雇用保険の役割、国として担う役割をはじめ、制度枠組みをあらためて検討する必要がある。

このほか提言では、雇用の流動化促進等の観点から、自己都合退職時の給付制限期間の一部見直し等を提案している。

【労働政策本部】