Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月19日 No.3423  提言「Society 5.0時代の東京」を公表 -デジタル革新による国際競争力強化を

経団連は9月17日、提言「Society 5.0時代の東京―デジタル革新を通じた国際競争力の強化」を公表した。経済のグローバル化の急速な進展とともに、都市の国際競争力の重要性が高まるなか、わが国の首都東京の競争力は伸び悩んでいると指摘されている。そこで今般、トップレベルのグローバル都市の一つとして東京の競争力を維持、強化すべく、従来の都市マネジメント施策を一層拡充するとともに、革新的なデジタル技術と多様なデータの活用により分野横断的に課題解決と価値創造を目指す「スマートシティ」(注)の早期実現を提言している。

■ Society 5.0時代の東京

スマートシティの実現により、東京は、Society 5.0の総合的なショーケースとして、さまざまな社会課題を解決し、継続して発展する都市のあり方を国内外に示すことが期待される。提言では、東京が将来体現すべき都市の姿を「新たな価値を創造する都市」「ユニバーサルデザインを備え、多様な人々が快適に過ごせる都市」「効率的で強靱な交通・インフラを備えた安全・安心な都市」「環境に配慮した持続可能な都市」の4つに整理した。これらの実現は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも通じるものである(図表参照)。

図表「Society 5.0時代に東京が体現すべき都市の姿」

■ 国際競争力強化に向けた施策

スマートシティの実現にあたっては、まず「推進体制の構築とビジョンの策定」が不可欠となる。どの課題を、何の技術によって、どのように解決するかについて明確なビジョンを策定するとともに、東京都全体ならびに都内の各エリアにおいて、住民、企業、大学等が参加するスマートシティ推進組織を設ける必要がある。

そのうえで、「都市活動を支える基盤の整備」が重要である。具体的には、まずデータや新技術の活用に向けて、行政をはじめさまざまな主体が個別に収集、保有している多様な都市関連データを共通の「都市データプラットフォーム」で一元的に管理し、分野や組織を超えたデータの活用とサービスの提供を可能にすることが求められる。

同時に、再開発・リノベーションを一層推進し、都市空間を再編成することも重要である。その際には、文化や自然などの資源も活用した「コンセプトに基づくエリア一体的な街づくり」が期待される。

提言では、前述の4つの将来像それぞれについて、実現に向けた課題・ニーズを示したうえで、具体的に取り組むべき施策を整理している。例えば、データプラットフォーム上に集約された、生活、ヘルスケア、交通・インフラ等に関するデータの利用環境を整えるとともに、イノベーションハブの設置、スタートアップへの支援、実証実験環境の整備などに取り組むことで、データ・新技術を活用したスタートアップや新たなビジネスが次々と生まれ、発展し続けるとしている。また、交通機関や輸送需要に関するリアルタイムデータなどさまざまなデータをあわせて分析し、渋滞・混雑情報の提供、公共交通料金の柔軟な設定などによって都市交通全体を最適化することなどを盛り込んでいる。

これらの施策を推進するうえでは「スピード感」と「多様なステークホルダーの視点」が不可欠である。そこで東京都に対して、都市データプラットフォームを1年以内に導入したうえで、データや新技術の活用のあり方について住民、企業、大学・研究機関等との対話を密に行うよう求めている。

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経団連では、同提言を東京都や関係省庁に建議し、都が現在検討を進めている長期戦略などへの反映を働きかけるとともに、政府のスマートシティ施策に連携して取り組み、東京をはじめとする各都市におけるSociety 5.0の社会実装を目指していく。

(注)スマートシティ=都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市

【産業政策本部】