Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年10月3日 No.3425  第7回企業による農業参入セミナーを開催 -農業参入の成功のポイントや参入事例を聞く

あいさつする十倉審議員会副議長
・農業活性化委員長

基調講演を行う三輪氏

経団連は9月12日、東京・大手町の経団連会館で、九州経済連合会(九経連、麻生泰会長)と「第7回企業による農業参入セミナー」を共催し、東京および九州の関係者80名が参加した。農業参入に向けたポイントについての講演、参入企業の事例紹介とあわせて、九州各県から支援体制等の説明があった。

冒頭、あいさつした十倉雅和審議員会副議長・農業活性化委員長は、「地域の基幹産業である農業の成長産業化の実現に向けて、企業による農業参入を通じ、技術・資金・ノウハウ等を活用することが重要だ」と述べ、同セミナーへの期待を示した。

第1部ではまず、日本総合研究所の三輪泰史エクスパートが「スマート農業時代における農業参入の成功のポイント」をテーマに基調講演を行った。三輪氏は、「耕作放棄地の増加や農業就業人口の減少をはじめ、生産現場は衰退傾向が続いているが、農業産出額は企業による農業参入や農業法人化の進展なども相まって、上向きになっている。この変化を契機として、農業が魅力的な産業へと成長する可能性は高い」と指摘。そのうえで、もうかる農業の実現等に関して、自律多機能型農業ロボット“MY DONKEY”を例に挙げながら、「農業外企業が農業生産に参入する場合は、法規制の観点から参入の要件を整理するとともに、参入の目的や対象地域を明確にすることが必要である。政府によるスマート農業政策の後押しも受けながら、現場の実態に即した先端技術をうまく活用していくことがカギ」とした。

田井氏(事例紹介)

福光氏(事例紹介)

次に、矢崎総業の田井孝治経営企画室主査とアグリテクノ矢崎の福光康治社長が、矢崎グループとしての農業への参入事例について講演。田井氏は、「本業の自動車部品製造の海外移転に伴い、雇用確保を目的に新規事業として農業に参入した」と経緯を説明。続いて福光氏は、中山間地での農業試験研究施設の運営、野菜工場での人工環境による野菜の通年栽培、農業法人の設立による畑作地での施設園芸等、事業展開の状況を説明。今後について、「地域社会との融和の深化、新しい耕種技術の確立による栽培原価の低減、販売体制の構築等に取り組みたい」と抱負を述べた。

第2部では、熊本県、大分県、宮崎県の担当者が企業の参入状況や支援体制について説明し、市町村等の関係機関と連携した支援体制、相談窓口の設置や参入相談から営農開始後までの一貫したサポート、研修会の開催等を紹介した。

最後に、陣内芳博九経連副会長・農林水産委員長が、「企業による農業参入は担い手不足の地域の受け皿としても期待され、雇用創出による地域活性化、地方創生に寄与する」とし、農業の持続的な発展には企業の力が必要であると強調した。

【産業政策本部】